オランダの精密発酵企業Viviciが、シリーズAラウンドで約51億円の調達を実施

オランダの精密発酵スタートアップViviciが、APG(世界最大の年金基金の一つABPの資産運用を担う企業体)と政府系ファンドのInvest-NLが主導したシリーズAラウンドで、3,250万ユーロ(約51億円)の調達を行ったと発表しました。

米国ではβ-ラクトグロブリンの製品化を実現


Viviciは精密発酵の商用化を目指して、dsm-firmenich VenturesFonterraの合弁事業として2022年末に設立されました。両社の長年の協力関係によって生み出された専門知識と知的財産を活用し、急速な発展を遂げています。

設立の翌年にはシードラウンドをクローズし、菌株の共同開発に向け米国の合成生物学企業Ginkgo Bioworksとの提携を実施。

欧州および米国の共同製造業者と協力して商業規模での生産に取り組んでおり、昨年11月にはベルギーのBio Base Europe Pilot Plantが保有する75,000リットルの発酵タンクで試験生産を行いました。

同社のβ-ラクトグロブリンは、必須アミノ酸の中でもタンパク質合成とエネルギー生産に重要な役割を果たし、肝臓で分解されない「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」を29%(通常では25%程度)含み、中でもロイシンの含有量(16%)が高い水準となっています。

昨年2月にはGRAS(Generally Recognized as Safe)ステータス取得に伴い、米国でB2B向けの製品化を果たしました。すでに食品会社との間で最初のオフテイク契約(長期供給契約)を確保し、製品を納入している最中だといいます。

近い将来、EU、シンガポール、英国、カナダでの発売も視野に入れており、複数の認可申請を進めています。

2つ目の製品となるラクトフェリンの発売へ


今回の調達資金は、新たなグローバル市場への進出、2つ目の乳タンパク質の上市、長期的な生産能力の確立に使われる予定。

Viviciが昨年供給を開始した最初の原料「Vivitein BLG」は、牛乳に含まれる主要な乳清タンパク質であるβ-ラクトグロブリンでした。次の製品としては、同じ「Vivitein」ブランドからラクトフェリンの発売を年内に予定しています。

ヒトやウシの初乳に多く含まれるラクトフェリンは、抗菌作用、免疫力向上、腸内環境の改善など、いくつかの機能的利点を有する乳タンパク質。しかしながら、わずかな分量しか含まれないため価格が高騰し、乳児栄養やサプリメント用にごく少量が供給されています。

それでも、CEOのStephan van Sint Fietによると昨年のウシラクトフェリン市場規模は6億7,600万ドル(約670億円)にも上っており、精密発酵の開発対象として理想的だったとのこと。

β-ラクトグロブリンとラクトフェリンの生産では、技術面・市場面から相当のシナジーが見込めるといい、「生産プロセスの大部分が共通しており、市場に展開する上でも同じセグメントをターゲットにできる」としています。

2025年2月現在、シンガポールのTurtleTreeとオーストラリアのAll Gが、米国で精密発酵ラクトフェリンのGRAS自己認証を取得済み。Viviciも間もなく同じ認可取得を見込んでいるとのことです。

参考記事:
Vivici secures €32.5m in Series A funding for precision fermentation expansion | The Cell Base
Vivici: Big Dairy-Backed Startup Raises $34M for Animal-Free Whey Proteins
Vivici raises $34m to expand animal-free dairy operation, plans move into lactoferrin market

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。