中国政府が、代替プロテインなどの新規食品を支持する新たな公式文書を発表

中国で今月開催された毎年恒例の「両会*」に先立ち、代替プロテインに対する政府支援を強化する趣旨の2つの文書が発表されました。
* 毎年3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)を合わせた名称。政府の活動報告や、法律の制定・改正、経済政策や予算案の審議などが行われる。
「五カ年計画」で培養肉などの研究を奨励
多数の人口を抱え経済発展に伴いCO₂排出が増加している中国は、現状世界最大の排出国となっており、専門家の指摘では、中国が脱炭素化を望むのであれば、2060年までにタンパク質消費の半分を代替品に置き換えなければならないとのこと。
同国はすでに再生可能エネルギー分野の世界的リーダーとなっていますが、これを補完する施策として、植物性代替肉や培養肉といった代替となるタンパク源の開発も強く推進してきました。
2021年に開始された「第14次五カ年計画」では「未来の食」に焦点を当てて培養肉と組み換えタンパク質の研究を奨励し、そのバイオテクノロジーの発展には米国も危機感を抱くほどです。
今回出された新しい文書の一つは、農業農村部の公式通知で、2028年までの国の農業科学技術革新の主要分野を概説したもの。
「農産物の加工と食品製造」、「農産物の品質と安全性」が優先分野として挙げられている中で、「新しいシナリオや特別なニーズを満たす次世代の食品を創造することができる」と代替タンパク質に明確に言及されており、今後の研究開発資金のさらなる増加が期待されます。
多様な食料供給システムの構築
2つ目の文書「中央一号文件」は、その1週間ほど後に出されました。こちらは、中国共産党中央委員会と国務院が毎年2月に発表する、その年最初の政策文書に位置付けられるもの。
今年の目標として「多様な食料供給システムの構築」が掲げられ、その中に「バイオテクノロジーを用いた農法の開発・発展と新たな食品源の探求」が含まれています。
具体的には、多くの植物由来・発酵由来の製品の開発に使用されている、真菌や藻類をベースとしたタンパク質抽出技術など、複数のチャネルを通じた食料源の拡大の必要性について強調。
また、消費者の信頼を確立し新たなタンパク源を市場に導入するために重要なステップとして、食品の安全性と農産物の品質に関する監督を強化するよう要求しています。
規制認可の枠組みを今こそ開発すべき
業界のシンクタンクGFI APACによると、これらは中国が考える農業政策の最重要目標を示した、最も影響力を持つ文書とのこと。
代表を務めるMirte Goskerは、「食品の安全性について両文書で具体的に言及されていることは、 新規食品カテゴリーの繁栄を可能にする包括的な規制認可の枠組みを今こそ開発すべきという、各国の規制当局に向けられた明確なメッセージ」だと述べています。
現在のところ、中国にも培養肉のような新規食品の認可プロセスは存在しませんが、管轄する国家食品安全リスク評価センター(CFSA)では国際的な動きに細心の注意を払い、培養肉の安全性評価のための強固な枠組み作りに取り組んでいる様子。
今年初めには、培養肉と発酵由来製品に焦点を当てた初の代替プロテインセンターが北京に誕生し、企業や研究機関の取り組みも進んでいる印象です。
中国本土とは規制プロセスが異なりますが、香港では昨年11月、オーストラリア企業Vowの培養フォアグラに対して認可が出され、販売が決定しています。
参考記事:
Two Sessions: Why China is Betting on Alternative Proteins in Its Annual Political Summit
What is ‘two sessions’, China’s biggest annual political event? – Firstpost
中国が今年の一号文件を発表、初めて肉牛に言及、養豚は安定化へ(中国)|農畜産業振興機構
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