オーストリアのRevo Foods、サーモンに続き3Dプリントした世界初のヴィーガンタコを発売

3Dプリンターで製造した代替サーモン「THE FILET」を半年前にスーパーマーケットに投入したオーストリアのRevo Foodsが、代替シーフードの新たなカテゴリーに進出。

クラウドファンディングキャンペーンを通じて資金調達を行い、特許取得済みの3Dプリンティング技術でマイコプロテインを成形した、世界初のヴィーガンタコ「THE KRAKEN」を限定発売しました。

消費者からのフィードバックを収集


新製品はRevo Foodsのウェブサイトで独占販売されており、EUではほぼ全域で配送が可能。

同社CEOを務めるRobin Simsaは、「新製品にタコを選ぶきっかけとなったのは、既存の代替品が存在しないという事実と、当社の技術で何ができるかを示すショーケースの役割を果たすユニークな外観」だといい、「サーモンなどの魚種に比べれば小規模の市場だが、現状競合のいない興味深い市場機会だ」と語っています。

タコは欧州ではあまりなじみのある食材とはいえず、主にスペイン、イタリア、ギリシャで消費されますが、北欧諸国ではほぼ食されることはありません。

同社では、小売向けよりも外食・ヴィーガン専門店向けの商品だと考えているようですが、今回の限定発売(数百パック)では、一般消費者からのフィードバックを得るとともに、レストラン業界のパートナー数社にもサンプルを提供することが目的とのこと。

肯定的なフィードバックが得られ、市場機会が十分に大きいと判断されれば、年内に正式発売の可能性もあるとしています。

栄養価の高さに寄与するマイコプロテイン


水産養殖管理協議会(ASC)が2022年に12カ国・12,000人以上を対象に行った調査では、シーフードを購入する主な要因は「健康」であり、80%以上が毎日の買い物に魚を含めることは健康にとって重要と回答しています。

そのままでも、グリルやフライでも食べられる「THE KRAKEN」は、タンパク質、オメガ3脂肪酸、食物繊維を豊富に含んでおり、EU域内で流通する食品の栄養表示「Nutri-Score(ニュートリスコア)」では最高ランクの「A」を獲得。

菌類由来のマイコプロテインをベースに用いていることによる、栄養価の高さが魅力となっています。

Revo Foodsは、3Dプリント食品を大量生産できる史上初の連続生産プロセスを開発。高精度の3D押出成形システムにより、繊維状のタンパク質マトリックスへ脂肪をシームレスに統合させ、ホールカットのシーフード生産を可能にしています。

タコにも人道的な扱いが必要に?


国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、EUでは2018年に約12万5,000トンのタコが消費され、そのうちイタリアだけで6万トン。アジアではさらに多く、同年の消費量は19万トンに達しました。

しかしながら、世界中で行われている乱獲がタコの個体数を圧迫しており、水揚げ量はここ数年減少の一途をたどっています。

スペイン、メキシコ、チリ、中国、日本などの国々ではタコ養殖場の建設が試みられていますが、これも大きな議論の的に。スペインの企業Nueva Pescanovaが年間3,000トン、約100万匹のタコの養殖を目指す工業的畜産にも似た養殖場はその一例で、動物愛護活動家、学者、気候変動の専門家などから猛烈な批判を浴びています。

その背景には、タコを魚類とは異なる高等動物とみなす動きがあります。9つの脳を持つタコは、非常に知的かつ社交的で、複雑な種であることが知られています。

野生のタコはカモフラージュの達人であり、捕食者から身を隠して逃げることに長けているのは有名ですが、実験により迷路などのパズルを解く能力も有していることが証明された研究も。

最近では、Netflixのドキュメンタリー映画『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る(英題:My Octopus Teacher)』でも、映画製作者のクレイグ・フォスターがタコと親密な絆を築く様子が描かれ、アカデミー賞を受賞するなど一躍有名になりました。

これらを受け、英国政府は2021年にタコが知覚を持った生き物であることを認め、スイス、ニュージーランド、米国と並んで、タコをゆでる行為を違法としました。

骨格を持たず皮膚も脆弱なタコは、養殖場という環境下では、取扱者やほかの個体からの攻撃により傷つけられる可能性が高くなります。さらに、そのような大規模生産において人道的な屠殺方法として認められている手法は、今のところ存在しません。

加えて、畜産と同様の非効率性についても考慮すべき点に挙げられます。肉食動物であるタコの食事には、魚粉や魚油などが必要になりますが、これらは今でも海から採られるものが大半。1kgのタコを生産するのに約3kgの飼料が必要であり、資源の利用としても非効率と指摘されています。

Revo Foodsの製品のような代替品が、これまで市場で唯一の存在であったユニークな食品の代替として消費者にどう受け止められるか注目です。

参考記事:
“Release THE KRAKEN!” Revo Foods unveils the first vegan octopus alternative
The Kraken: Revo Foods Releases the World’s First Vegan Octopus
OCTOPUS FACTORY FARMING: A RECIPE FOR DISASTER

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