オーストラリアの議会でMagic Valleyが培養肉試食イベントを開催、大臣が未来の食を体験

オーストラリアの培養肉企業Magic Valleyが、シドニーの中心業務地区に位置するニューサウスウェールズ州議事堂で試食イベントを開催し、培養ラム肉のミートボールと豚肉のダンプリングを披露しました。
培養肉の販売が間近に迫るオーストラリア
イベントに招待されたのはニューサウスウェールズ州の議会議員と大臣17名で、同州財務相のDaniel Mookheyとイノベーション担当大臣のAnoulack Chanthivongも出席しました。
イベントを主催した動物正義党(AJP)代表を務めるEmma Hurst上院議員は、「培養肉が世界を変えることは疑いない」とコメント。「ニューサウスウェールズ州およびオーストラリアが細胞農業界の生産・販売・輸出におけるリーダーとなり、この食料システムの世界的な移行の一端を担う大きな機会がある」と述べました。
細胞農業に力を入れる同州の州都シドニーには、培養ウズラを開発するVowも拠点を置いており、同社は4月にオーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)から暫定的な販売認可を取得。今月中に食品規制大臣会議での検討を経て最終判断が予定されており、その後レストランでの販売と、年内に小売り展開も開始する予定です。
Magic Valleyは昨年4月にも、隣接するビクトリア州メルボルンのJohn Gorilla Caféで培養豚肉の試食イベントを開催。各業界から集まった多様な参加者は製品を非常に高く評価し、ある参加者は「従来の肉と区別できない」と語ったほどでした。
また、有名シェフのゴードン・ラムゼイが出演するテレビ番組『Gordon Ramsay’s Food Stars Australia』に出演し、プロトタイプを披露したこともあります。
国内で新たな培養肉工場建設へ
Magic Valleyの技術は人工多能性幹細胞(iPS細胞)を活用して、ウシ胎児血清(FBS)に頼らずに培養を行うもの。生きた動物から採取した皮膚細胞の小さなサンプルを増殖させてiPS細胞に変換し、さらに筋細胞や脂肪細胞へと分化させます。
分化した細胞は、水とアミノ酸などの栄養素を含んだ培養液を用いてバイオリアクター内で培養。数週間後で細胞を収穫し、最終製品に加工します。無限に増殖できるiPS細胞を用いているため、元の細胞サンプルから繰り返し生産が可能です。
同社によると、このプロセスは従来の食肉と比較して、温室効果ガス排出量を92%、土地利用を95%、水使用量を78%削減できるとのこと。
2023年には、インキュベーターの共同施設内に最大3,000リットルのバイオリアクターを収容できるパイロットプラントを設置し、年間最大150トンの培養肉を生産する能力を確保しました。
現在は、新たに年間500トン規模の培養肉工場を建設するため、資金調達を進めている最中。先日、連邦政府から10万豪ドル(約945万円)の補助金を受け取り、さらに政府の産業成長プログラム(Industry Growth Program)を通じて最大500万豪ドル(約4億7,200万円)の資金援助を受ける資格を有しているといいます。
参考記事:
Magic Valley makes history at NSW Parliament with first cultivated meat tasting | PPTI News
Australian Lawmakers Get A Taste of the Future at Cultivated Meat Tasting in Parliament
Cultivated meat startup Magic Valley raising $3m
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