イスラム教の主要な権威機関がムスリムの培養肉消費を承認、将来の200兆円市場への道を開く

先月初旬にカタールの首都ドーハで開催された国際イスラム法学アカデミー(以下、IIFA)の第26回会議で、一定の条件が満たされた場合、ムスリムが培養肉を摂取しても構わないとの裁定が下されました。
イスラム教の主要な権威機関によるこのファトワー(宗教的見解)に基づき、世界中の約20億人のムスリムに培養肉の消費が認められています。
細胞培養や遺伝子組み換えの最新技術について判断
今回の会議では、人工知能やビデオゲームなどの議題と並んで、培養肉と遺伝子組み換え食品の消費について、60カ国以上から集まった230人の専門家が議論を実施。
その結果、特定の要件を満たす限りにおいてこれらの食品の販売と消費が認められ、世界人口の4分の1を占める一大市場が新規食品に開放されることとなりました。
イスラム協力機構(OIC)の傘下にあるIIFAは、イスラム教に関する世界有数の法的権威を認められた団体で、さまざまな分野に精通したイスラム法学者、学者、知識人がメンバーとなり、科学、医学、経済、技術といった現代の問題に対してイスラムの原則をどのように適用すべきかについて指導を行っています。
培養肉についてIIFAは、ムスリムが消費するにあたって満たすべき次のような条件を提示しました。
- 培養の元となる細胞は、イスラム法に従って食用および屠殺が許可されている動物から採取されること。従って、豚由来の製品は認められない。
- 動物細胞の培養は、血液などの禁忌物質を含まない培地で行うこと。従って、ウシ胎児血清(FBS)の使用は認められない。
- 製品は、信頼のおける規制当局の監督下で開発されたものであること。
ただし、IIFAは消費者にとっての完全な透明性確保と食品安全基準を遵守する必要性を訴えた上で、培養肉はあくまでも従来の食肉供給を補完するものであって、置き換えるものではないと強調しています。
IIFAはまた、食用として認められた動物に由来し、安全に加工され、イスラム法に準拠した遺伝子組み換え食品の摂取を許可しました。ここでも、当該食品に関連する情報および製造方法を開示することの重要性が強調されています。
業界企業が満たすべき事項が明確に
IIFAの裁定は、ムスリムの培養肉摂取を認めた3件目の事例となりました。このようなイスラム法に基づく見解(ファトワー)は、コーランで具体的に定められていない事項に関する公式判断として、全ムスリムにとっての重要な指針となります。
昨年、シンガポール・イスラム評議会(MUIS)が培養肉をハラールと認めるファトワーを発表。今年3月には、韓国ムスリム連盟(KMF)も同様の決定を行いました。
それ以前にも、サウジアラビアの主要なイスラム法学者3名が、培養肉メーカーのGOOD Meatに対し培養肉はハラールとみなせるとの見解を示しており、米国のイスラム法学者会議(AMJA)も、ハラールの基準が守られる場合に限り、培養肉を暫定的に許可すると判断しています。
昨年で9,350億ドル(約135兆円)、2032年までに1兆6,000億ドル(約230兆円)に達すると推定されるハラール肉市場には培養肉企業も注目しており、2023年の44社を対象とした調査では、87%の企業がハラール要件への準拠を優先事項として挙げていました。
しかしながら、ハラールの要件に製品を準拠させる方法がはっきりしていない状態が、主要な参入障壁として残っていたとのこと。
GFI APACは今回の裁定を受けて、「最終的にこの決定は、食品イノベーションを文化的・宗教的価値観と調和させるための重要な一歩を踏み出すものであり、代替プロテインがもはや代替品ではなくなる世界を実現する上で不可欠な要素だ」とSNS上でコメントしています。
参考記事:
Leading Islamic Authority Approves Consumption of Cultivated Meat for Muslims
26th International Islamic Fiqh Academy Conference Concludes in Doha | Qatar news agency
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