培養肉はハラールになり得る、イスラム教の指導的学者が見解を発表

代替プロテイン界のリーダー企業Eat Justに対し、イスラム教の学者3名が見解を発表。一定の基準を満たせば、培養肉はハラールとみなすことができるとし、満たすべき要件についてのガイドラインを示しました。

世界人口の4分の1がハラールを遵守


Eat Justの子会社であるGOOD Meatは、2020年に世界初の培養肉メーカーとして、シンガポールで規制当局の認可を取得。細胞培養により生産した鶏肉でハラール認証を得るため、このガイドラインに沿って取り組みを進めます。

イスラム教の教えでは、食べてよいものとそうでないものが厳格に区別されています。食肉に関しては、豚肉のほか、血液を含んだ肉などは禁止され、屠殺の方法についての細かな規定も。

培養肉でハラール認証が取得できれば、イスラム社会で広く受け入れられるための大きな一歩となるでしょう。ハラールを守る消費者は、世界人口の25%。ハラール食肉市場は毎年7%の勢いで成長しており、2031年には3,750億ドル(約55兆6,400億円)に達すると推定されています。

さらにムスリムは、とりわけ自国の認証機関によるハラール認証を待ち望んでおり、自信を持って代替肉製品を消費することを望んでいると明らかにした調査結果もあります。

培養肉がハラールとなる基準


今回の見解は、Sheikh Abdullah AlManeaAbdullah al-MutlaqSaad Al-Shathryというサウジアラビアで高名な3名のシャリーア(イスラム法)学者によるもの。

彼らはGOOD Meat側が作成した、同社の培養チキンの生産方法が記された文書を精査し、細胞の調達・選定方法、細胞の成長を促す栄養培地の成分、細胞の収穫方法、完成品の製造方法についてレビューを行いました。

その結果として、一般的に以下の基準を満たせば、培養肉はハラールであると結論づけています。

  1. 鶏や牛など、食べることが許されている動物の細胞株を用いていること。
  2. 細胞を採取する動物は、イスラム法に則って屠殺されていること。
  3. 細胞に与える栄養分は食べることが許されており、流れ出た血液、アルコール、不適切な方法で屠殺された動物や豚から抽出された物質など、禁じられた物質を含んでいないこと。
  4. 培養された肉は食用にでき、人体に害を及ぼさないことが、その国の食品規制機関などの専門家により確認されていること。

イスラムの経典コーランでは豚肉の消費を禁じているため、培養ポークは依然としてハラールとはみなされないということになります。また、論争の的になっているウシ胎児血清(FBS)を培地に用いる培養肉も、子牛の血液に由来するため、上記の基準に違反しています。

ムスリムの消費者は培養肉の購入に意欲的


GOOD Meatがシンガポールと米国で認可を受けた鶏の細胞株と培養チキンの生産工程についても、依然FBSを使用しているため、シャリーア学者が定めたハラール基準は満たしていません。しかしながら、同社は今年1月にシンガポールで世界初となる無血清培地の規制認可を受けました。

現在は米国食品医薬品局(FDA)から取得した認可の修正に向け取り組んでおり、動物由来の栄養培地を使用しない製法を開発し、ハラールのガイドラインも満たす計画とのこと。

同社が昨年実施した世論調査では、イスラム教徒の多い中東6カ国の消費者の大多数がハラールを遵守しており、従来の食肉と同じ味・価格帯であれば培養肉の購入に移行することが明らかになりました。

7月に発表された別の研究は、「ムスリムの消費者は、ハラール経済にとっても培養肉が潜在的な利益をもたらすことを認識している」とし、「一部のイスラム法学者や消費者は、培養肉の普及を、環境の持続可能性に関わる重要な原則である”khilafah“(コーラン 10:14)に向けた一歩とみなしているかもしれない」と指摘しています。

GOOD Meatの共同創業者でありCEOを務めるJosh Tetrickは、「培養肉はハラールの食習慣を遵守する世界中の何十億もの人々の選択肢にならなければならない。それを確実に実現する方法について、待ち望んでいた明確な指針が提供された。すべての企業はこのガイドラインを満たすプロセスの構築に取り組むべきだ」と述べています。

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