空気中の炭素などから作る乳製品フリーのホイップクリーム、米Savorら3社の提携で開発進む

米国を拠点とするフードテック企業のAlamance FoodsSavor、神経科学と食品を掛け合わせた研究を行うイタリア企業Thimusの3社が提携を発表。

パーム油を一切使用せず「空気」を原料とする、世界初のホイップクリームの開発プロジェクトが始まりました。

画期的な代替脂肪の新たな応用例に


3社は、今月初めにシカゴで開催されたイベント「Future Food-Tech」において、カーボンニュートラルなホイップクリームの試作品を展示しました。

この製品の最大の特長は、パーム油を使用していないこと。パーム油は、乳製品フリーのホイップクリーム代替品に一般的に使用されている原料ですが、プランテーションが集中するインドネシアやマレーシアで山火事の直接的な原因となるなど、数多くの問題を抱えていることで知られています。

今回の提携により、Alamance Foodsの研究開発能力、Savorの空気由来の代替脂肪、Thimusの官能評価の技術が融合。わずか3週間で集中的に共同開発を進めて、革新的な新製品を完成させました。

展示会で行われた味覚テストの参加者は、従来のパーム油ベースのホイップクリームよりも新しい試作品の方を好んだといい、初期のプロジェクトが成功を収めたことで、より大規模なパートナーシップの基盤が築かれたとしています。

空気中のCO₂や水素から脂肪を構造化


60年以上の歴史を持つAlamance Foodsは、スプレータイプのホイップクリーム製造におけるパイオニア企業。オーツ麦、ココナッツ、アーモンドを原料とした乳製品フリーの製品のほか、多くの人気ブランドを展開してきました。

Thimusはイタリア、カナダ、米国に拠点を置き、脳波検査装置を用いて人々のさまざまな食品に対する神経反応を評価。そのデータを生かして、消費者ニーズに対応した製品開発を迅速に行いたい企業を支援しています。

Savorは、カリフォルニアを拠点とするスタートアップで、動物由来や植物由来の成分を使用せず、農地も一切必要としない画期的な代替脂肪を生産する企業です。

ビル・ゲイツをはじめとする著名な投資家から支援を受け、排出源からピンポイントで回収したCO₂、グリーン水素、メタンを組み合わせた熱化学的プロセスによって、分子レベルで脂肪を構造化。

これらのガスを、まずアルカンと呼ばれる炭素鎖を持つ構造、続けて脂肪酸へと変換し、最終的には脂肪を生成します。

この手法では脂肪酸組成(短鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸など)を調整できるため、既存のあらゆる油脂の代替品を作ることが可能といい、先日バターの製品化に成功していました。

カリフォルニア州にあるミシュランの星付きレストラン「SingleThread」や「ONE65」などで、このバターを使用したメニューの提供が決まっています。

参考記事:
Savor | LinkedIn
No Palm, No Problem: Food Innovators Create Non-Dairy Whipped Cream with Carbon
Whipping up innovation: A new collaborative approach to product development

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