CO₂と電気をタンパク質豊富なバイオマスに変換する新手法を開発 —西安交通大学&中国科学院

西安交通大学と中国科学院の研究チームが、二酸化炭素(CO₂)と電気を主原料に単細胞タンパク質(SCP)を生産する新たなバイオプロセスを開発しました。研究結果が『Environmental Science and Ecotechnology』誌に掲載されています。
酢酸を中間代謝物質に利用
Zeyan PanとKun Guoが率いたこの研究は、微生物のはたらきでCO₂を酢酸に変換する「微生物電気合成(MES)」と呼ばれるプロセスにおける、重要な課題に取り組むものです。
微生物電気合成は従来、新たな生産手法として有望視されながらも、酢酸やメタンのような比較的価値の低い生成物しか得ることができませんでした。
これを克服するため研究チームは、酢酸を単細胞タンパク質(=微生物タンパク質)に変換する、2段階からなるシステムを設計。動物飼料やヒトの食品としても持続可能なタンパク源となり得るバイオマスを、大規模に生産する可能性を見ています。
嫌気性と好気性の循環プロセス
まず第1段階では、水の電気分解によって微細な水素気泡を発生させた嫌気性のリアクター内で、ホモ酢酸菌(Acetobacterium)が水素を使ってCO₂を酢酸へと変換。
酢酸を豊富に含んだこの培地は、次に第2段階で用いる好気性の連続攪拌リアクターに移されます。ここでは、酢酸利用細菌(Alcaligenes)が、前段階のアウトプットとして得られた酢酸をタンパク質豊富なバイオマスに変換します。
2基のリアクターを統合させ、その間で細胞を含まない培地を循環させることで、廃水の発生と栄養分の浪費、生産物の阻害を減らし、システム全体の効率性向上に成功したとのこと。
記録されたバイオマス濃度は最大で17.4g/Lに達し、平均タンパク質含有率は74%で、魚粉(68%)や大豆粕(48%)のような従来のタンパク質源を上回りました。
特筆すべきは、1日の平均単細胞タンパク質生産量も1.5g/Lと高い水準を達成できており、タンパク質生産のスケールアップに有望な道筋を示せたといいます。
バイオ燃料や特殊化学品の生産にも
研究チームは、「温室効果ガスを価値あるバイオ製品に変換するこのアプローチは、循環型経済の実現に向けた重要な一歩となる」と主張。しかし一方で、ある点では課題も存在すると認めています。
問題は、長期間運転した場合、培地の循環に使用される中空糸膜が汚染されるリスクがあること。また、単細胞タンパク質は核酸を多く含むため、さらなる加工なしに直接ヒトの食品に取り入れることが制限される可能性もあります。
今回の研究は単細胞タンパク質の生産に焦点を当てているものの、研究チームは、同じシステムがバイオ燃料や特殊化学品などの生産にも適用可能だと強調しました。
微生物を用いる同種のプロセスでタンパク質を生産する企業としては、Solar FoodsやCalysta、Air Protein、NovoNutrientsなどが挙げられます。
参考記事:
Scientists develop a bioprocess that converts CO₂ and electricity into protein-rich biomass | PPTI News
Breakthrough bioprocess turns CO2 and electri | EurekAlert!
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