アロエベラ製の低コスト足場を牛脂肪の培養に活用 —エルサレム・ヘブライ大学

培養肉生産の革新的なアプローチを示す研究結果が、『npj Science of Food』誌に掲載されました。
牛の脂肪組織を成長させる天然の足場としてアロエベラを使用。スケーラビリティやコスト効率を高め、持続可能な生産を推し進められる可能性があるといいます。
アロエベラセルロースで細胞の接着を促進
本研究は、エルサレム・ヘブライ大学のチームにより行われたもの。アロエベラは化粧品や食品生産への利用で知られていますが、この生産時に副産物として出るアロエベラの柔組織に由来するセルロース(AVPC)が、ウシ間葉系幹細胞(bMSC)を培養するための足場として働くことが明らかにされました。
多孔質で吸水性のある構造をしたアロエベラセルロースは、水分を保持し、細胞の接着を促進して組織の発達を助けることによって、細胞の成長に寄与するといいます。
細胞培養時の培地にオレイン酸を加えることで、研究チームは脂肪滴の形成を促し、実質的に牛脂によく似た脂肪の蓄積を作り出しました。
合成や動物由来の足場とは異なり、アロエベラセルロースは可食性・生分解性の天然の代替物を提供する点が特徴。
ニュートラルな味、質感、繊維状の組成は、培養肉用途でも、植物由来成分と合わせたハイブリッド肉でも魅力的。足場自体も3Dプリント足場に比べると製造が簡便で、コストを削減しながら市場で受け入れられるクリーンラベル製品を実現することが可能です。
スケーラビリティに優れ、長期の培養でも安定
この研究の重要な点は、シングルユースのマクロ流体バイオリアクター(MSUB)内にアロエベラ製の足場を上手く組み込んだこと。
培養肉生産の商業化において重要な要素となるスケーラビリティの問題に対処する新たな設計で、攪拌中も足場の構造を維持しながら、より大規模な培養を可能にするといいます。
細胞へのメカニカルストレスを最小限に抑えながら、通気性と栄養分の流れを改善し、より安定した脂肪組織の成長が見られました。また、アロエベラ製の足場は最長68日間という長期にわたって安定性を示し、持続的な培養プロセスへの応用が効く可能性も。
全体として、設備投資を抑え、大規模な培養肉生産をより効率的に行える道筋が示されました。持続可能性の面で妥協せず製品の品質を高めたい食品メーカーにとって、有望な選択肢となるかもしれません。
参考記事:
New Study Explores Aloe Vera as a Cost-Effective Scaffold for Cultivated Meat
Aloe vera scaffolds pave the way for sustainable cultured meat production | The Cell Base
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