中国初となる培養肉のパイロットプラントを建設中のCellXが、約8.6億円を調達
中国の培養肉開発をリードするCellXが、シリーズA+ラウンドで650万ドル(約8億6,500万円)を調達。培養肉製品のパイロットスケール生産への移行に向けて前進したと発表しました。現在までの累計調達額は2,000万ドル(約26億6,000万円)を超え、中国の細胞農業スタートアップとしては最高額となっています。
世界有数の規模を誇るパイロットプラント
2020年設立のCellXは、細胞株の開発、培地の最適化、バイオプロセスの革新、クリエイティブな最終製品の設計という、培養肉の重要な技術分野にまたがる研究開発プラットフォームを構築しています。
さまざまな生物種から10を超える細胞株を開発し、そのうち5株以上を懸濁培養*1 に適応させることに成功。さらに、血清を使用しない培地を数種類開発し、収率も大幅に向上させました。アジア太平洋地域における培養肉の商業化を促進するため、世界中の主要大学や企業と積極的に協力を進めています。
現在は2,000リットルへのスケールアップに取り組んでいる最中といい、今年初めには、バイオテクノロジーと食品機器を手掛ける上場企業Tofflonとの合弁により、中国随一の培養肉のパイロットプラント建設に着手。千リットル規模のバイオリアクターを複数設置するほか、顧客がCellXの製品を試食できる体験施設としても機能させる予定です。
中国では研究開発のエコシステムが整っている
CellXの共同創業者でありCEOのZiliang Yangは、「中国だけで毎年1億トンを超える食肉が消費されており、これは世界の食肉消費量の4分の1以上に相当する。培養肉でサプライチェーンに有意な影響を与えるためには、低コストで大規模な生産の実現が鍵となる」と述べています。
この「低コストで大規模生産」という目標を完全に実現した企業はいまだ存在しないものの、CellXと中国にはこの点で強みがあるとし、「中国のバイオ医薬品産業と発酵産業が活況を呈しているおかげで、低価格の培地や機器、バイオプロセスを行う有能なエンジニアといったエコシステムが整っている」とも語りました。
大量の食肉需要を抱える中、培養肉をはじめとした代替プロテインへの注目度が高まりつつある中国。農業農村部が策定した第14次五カ年計画(2021~25年)には、培養肉と「未来の食」の項目が盛り込まれました。習近平国家主席も、昨年行われた中国人民政治協商会議の全国委員会で、主食となる食料の安定供給を確保することの重要性を強調しています*2。
近年の中国と欧米諸国との分断にもかかわらず、CellXは、全人類が共通して直面する問題に向かって細胞農業界のグローバル化が加速するとの見方です。
*1 液体培地を用いて撹拌または振とうしながら培養することで、細胞へ栄養・酸素を効率的に供給できる手法
*2 https://english.news.cn/20220307/e98039b53ab8418e9684c0c5847e943c/c.html
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