オランダで世界初の「培養肉農場」設立へ、畜産農家の多角化を支援するコンソーシアム立ち上げ

フードテックや農業関連の企業および団体で構成される新たな国際コンソーシアム「CRAFT Consortium」が立ち上がり、オランダに世界初となる培養肉農場を設立する先駆的なプロジェクトが発表されました。
新技術によって農家を脇に追いやるのではなく、食料生産の中心的存在であり続けるように設計し、よりレジリエントな農業システムの構築を実証する狙いです。
RespectFarmsのコンセプトの実地展開へ
このプロジェクトは、培養肉技術を通じて農家の事業多角化を支援することが目的。特に、既存の農場へ培養肉生産を統合することで、農家主導かつ地域に根差した生産システムの実現を目指します。
「CRAFT Consortium」のメンバーは、RespectFarms、ワーゲニンゲン大学、Mosa Meat、Aleph Farms、Multus、Kipster、Royal Kuijpers。
中心となっているRespectFarmsは、従来型農場の改良と最適化で培養肉生産を行えるようにするというコンセプトの下に、2021年に設立された企業。本プロジェクトでは、農場への実地導入を主導するシステムインテグレーターの役割を担います。
Mosa MeatとAleph Farmsは、培養牛肉とハイブリッド肉製品に関する専門知識に加え、コンプライアンスと市場投入に向けた製品開発・規制戦略の知見を提供。
Multusはスケーラブルで資源効率の高い培地を供給、Kipsterは持続可能な農業と経済学の専門知識を提供し、Royal Kuijpersは施設設計と運営を監督します。
農場内で伝統と革新の融合を図る
この取り組みは欧州連合(EU)の機関EIT Foodの共同出資により推進され、申請した400万ユーロ(約6億9,400万円)の助成金のうち、すでに最初の200万ユーロの交付が決定済み。
培養肉と伝統的な農業とが共存可能であることを実証し、細胞農業が脅威ではなく大きな機会であると農家に確信させる一助となることが期待されます。
RespectFarmsの共同創業者Ralf Becksは、「CRAFTは農家と共に食料生産の新たな手法を創出するためにある」とコメント。「農業で実証済みの手法を新技術と組み合わせることで、市場投入と影響力の拡大を加速させられる。地球規模の課題を農場規模に還元し、解決可能なものにしたい。成功モデルが一度確立されれば、世界規模で展開していけるだろう」と語っています。
Mosa Meatの共同創業者でCOOを務めるPeter Verstrateは、「これは培養肉と従来型農業を融合させる世界初の試みであり、消費者に双方のメリットを提供することを約束するものだ。地元で生産・販売される製品を通じて、従来の食肉が持つ比類なき食体験を実現したい」と述べました。
また、「一方では根本的に新しく、他方では何世紀も前から存在するビジネスモデルを推し進め、私たちが知っている農業に新たな視点をもたらせるだろう。農家にとっても同様だ」としています。
参考記事:
The World’s First Cultivated Meat Farm to be Built in the Netherlands
CRAFT Consortium to build world’s first cultivated meat farm in the Netherlands | PPTI News
Consortium to Launch “World’s First” Cultivated Meat Farm in the Netherlands, Helping Farmers Diversify Their Businesses
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