米Beyond Meatが新たにライフサイクルアセスメントを実施、気候変動を抑える植物性代替肉の環境メリットを明らかに
米国の代替肉大手Beyond Meatが、最新のライフサイクルアセスメント(以下、LCA)の結果をまとめたレポートを発行。同社のハンバーガーパティと動物由来のビーフパティとを比較し、気候変動への影響を評価しました。
改良したバーガーパティの環境影響を評価
Beyond Meatは2018年、ミシガン大学のCenter for Sustainable Systemsに委託して、オリジナルのバーガーパティ「Beyond Burger」(2015年発売)のLCAを実施。
従来の牛肉との比較を行ったところ、植物性代替肉では温室効果ガス排出量が90%、エネルギー消費量が46%、水不足への影響が99%以上、土地利用への影響が93%少ないという結論を得ていました。
Beyond Burgerはその後2度の改良を経て、2021年にバージョン3.0が発売されています。この改良版に対し、オランダの調査会社Blonk Consultantsが、ISO規格に準拠し新たにLCAを実施しました。
冷蔵輸送、原材料の生産が主要因に
新しいLCAでは、2022年のデータに基づき、地球温暖化への影響、土地利用、水消費、再生不可能な化石資源の利用に焦点が当てられました。
生産に関するさまざまな要素の影響を考慮した結果、冷蔵輸送が、バーガーパティの温室効果ガス排出(40%)と化石資源利用(42%)の最大の要因となっていることが判明。
その他の顕著な要因としては原材料の生産があり、温室効果ガス排出の35%、化石資源利用の25%を占めているほか、土地利用の81%、地球温暖化への影響のほぼ100%、そして水消費の70%を占めています。
原材料の中で最も影響が大きかったのは(Beyond Burgerの16%を占める)エンドウ豆タンパク質で、温室効果ガス排出の11%、化石資源利用の9%、土地利用の43%に寄与していました。
一方、水消費に与える影響は7%と低く、天然香料の代替品(20%)、米タンパク質(18%)が最も高くなっています。
Beyond Burgerの気候変動への影響において、3つ目に大きな要素はパッケージ。地球温暖化への影響の14%、化石資源利用の17%、土地利用の16%、水消費の12%を占めていました。
地球温暖化影響は89%小さいと結論
結論として、米国で生産される標準的な4分の1ポンドの80/20(赤身と脂肪の比率が80:20)ビーフパティと比較した場合、Beyond Burgerは、温室効果ガス排出量が90%、化石資源利用量が37%、土地利用面積が97%、水消費量が97%少ないことが判明。
Beyond Burgerの地球温暖化への影響は89%小さいとされ、2018年のLCAと同等の結果が得られました。
また、LCA自体は製品の環境影響に焦点を当てたものでしたが、従来の牛肉と比較した栄養面のメリットも強調されています。
どちらもタンパク質含有量は同じ(4オンスあたり20g)ですが、Beyond Burgerの方が含まれる鉄分が豊富。飽和脂肪酸と総脂肪は少なく低カロリー、もちろんコレステロールは含んでいません。
Beyond Meatは昨年、「Beyond Steak」が心疾患リスクの低減に寄与すると認められ、米国心臓協会(AHA)のHeart-Check認証を取得。消費者の健康志向に訴えかける広告キャンペーンを展開しています。
環境面でのメリットこそ「存在理由」
Beyond Meatにとって2023年は、売上高の減少(第3四半期末時点で前年比8.3%減)を招き、通期見通しの下方修正を重ねた不安定な1年となっただけに、今回のLCAで良い結果が得られたことは喜ばしいニュースとなりました。
LCAと並行して、同社は2022年版のESGレポートを発表。創業者でありCEOのEthan Brownは、レポートの冒頭で気候変動へ及ぼすプラス影響の重要性を繰り返して強調し、それを二次的な要因ではなく、同社の「存在理由」だと主張しています。
気候変動を緩和するための具体的な戦略として、動物性の食肉から植物性代替肉への移行により家畜由来のメタンガス排出を迅速に削減すること、土地利用の削減により空いた土地に炭素を隔離* することの2つを挙げています。
* 炭素隔離とは、CO₂が大気中に排出されるのを防ぐ取り組みのこと。植林活動などにより植物に吸収させる「生物学的な手法」と、CO₂を回収して地中や海底に貯留する「地質学的な手法」がある。
参考記事:
BEYOND MEAT® RELEASES ITS 2022 ESG REPORT AND UPDATED LCA STUDY
Beyond Meat’s New LCA Reveals the Climate Benefits of Its Burger Over Beef
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