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イスラエルの分子農業スタートアップBioBetter、タバコを用いて成長因子を生産するパイロットプラントを開設

イスラエル発のスタートアップBioBetterが、培養肉向けに食品グレードの成長因子の生産を加速させるため、新たなパイロットプラントを開設したと発表しました。

天然のバイオリアクターとしてタバコを活用


BioBetterは植物としてのタバコを天然のバイオリアクターとして活用し、成長因子を生産する分子農業プラットフォームを独自開発。代替プロテインの普及を促進するThe Good Food Institute(GFI)も注目する次世代の技術によって、細胞農業の未来に革命を起こしています。

成長因子は、細胞の増殖と分化において重要な役割を果たし、構造の整った筋組織の形成を可能にします。BioBetterは、遺伝子組み換えにより成長因子を生産するようプログラムされたタバコを、大規模なネットハウスで栽培。

遺伝子組み換え物質や発がん性物質が漏出しないよう慎重に設計されており、化学的に誘導された場合にのみ植物が成長因子を発現する仕組みです。不注意による摂取や二次汚染のリスクを回避するため、非食用・非飼料用のタバコを使用しています。

持続可能性へのコミットメントを強める同社では、灌漑用水にリサイクルした水を使用。窒素肥料の使用は最小限に抑え、CO₂排出による環境影響も減らす計画です。

成長因子のコストを100分の1に


培養肉の生産プロセスは比較的高価にとどまっており、規模を拡大させ、従来の食肉と同等の価格を実現することが難しくなっているのが現状。

BioBetterでは、培地コストを最小限に抑えることが培養肉生産における重要な要素と捉え、培地の主成分であるインスリンを含む成長因子のコストを、現在の100分の1となるグラム単価1ドルまで下げることを目標にしています。

同社はここ1年で、パイロットプラントの建設と生産規模拡大、インスリンとFGF(線維芽細胞増殖因子)を発現するタバコの大規模栽培、生産コストの大幅低減を可能にする成長因子発現レベルの達成、イスラエル保健省による規制プロセスの大幅な進展、培養肉セクターを代表する企業との協業と、大きなマイルストーンを次々と達成してきました。

新しく開設したパイロットプラントでは、毎日100kgの葉を処理可能。2025年には一日あたり処理量を25トンにまで引き上げ、年間5トンの成長因子を生産することを目標に据えています。

ISO2200とHACCPに準拠するなど、食品グレードの成長因子を生産するために必要とされる要求事項をすべて満たしており、現在、イスラエル保健省からの食品製造ライセンス取得を進めている段階です。

2024年の商用化が目標


BioBetterはまた、ウシインスリンを発現する植物の栽培でも画期的な成果を上げました。イスラエル北部では、すでにFGF2を発現するタバコを4カ所の大型ネットハウスで栽培し、最初のシーズンで収穫に成功しています。

さらに多くのFGF2とインスリンを発現する植物の栽培計画が進行中であり、2024年には商用化を見込んでいるとのこと。

共同創業者のDana Yardenは、「成長因子のサンプルを世界中の培養肉・細胞培地のメーカーと共有し、いくつかの企業や学術機関から、FGF2とインスリンの両方について有望なPoC(概念実証)の成果を得た。大幅な成長を遂げようとしている培養肉セクターは、成長因子の大量供給にかかっているといっても過言ではないだろう」と述べています。

同社は昨年、Jerusalem Venture PartnersがリードインベスターとなったシリーズAラウンドで1,000万ドル(約14億9,000万円)を調達。イスラエルの学術機関、大手企業、スタートアップ企業が連携して培養肉セクターを推進するIsraeli Cultivated Meat Consortiumのメンバーとしても活動しています。

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