ドイツの菌糸体スタートアップInfinite Rootsが、シリーズBラウンドで約85.7億円を調達

ドイツ・ハンブルクを拠点とするInfinite Roots(旧称:Mushlabs)が、シリーズBラウンドで5,800万ドル(約85億7,000万円)の調達を行ったと発表しました。今年中の製品化を目標に、発酵プラットフォームの規模拡大を進めます。

食用キノコの菌糸体を使用


同ラウンドでは、Dr. Hans Riegel Holding(ハリボーの持株会社)がリードインベスターとなり、欧州イノベーション会議のEIC Fund、ドイツの小売業者REWE Group、タイのBetagro Venturesが支援を実施。これにより、Infinite Rootsの調達総額は8,670万ドル(約128億円)に達しました。

2018年に設立されたInfinite Rootsは、菌糸体を液体発酵により成長させてタンパク質原料を生産。スーパーマーケットで購入できるような一般的なキノコの菌糸体のみを使用しているため、新規食品とはみなされず、大部分の規制プロセスが緩和されています。

同社はすでに米国のGRAS自己認証* を取得しており、今後、米国食品医薬品局(FDA)への提出を行って正式な「FDA GRAS」の取得も予定。欧州食品安全機関(EFSA)とも協議を進めている最中です。

* 参考:GRAS自己認証 → FDA GRAS取得の流れ

保有資産を最小限に抑え生産を外注


菌糸体は、必須アミノ酸すべてや微量栄養素を含み栄養価が優れていることに加え、「味」の面でもメリットが。通常、菌糸体を使った食品は淡白な味を示し、スパイスや調味料によって肉の風味を再現することが容易になります。

Infinite Rootsは、キノコの根が本来持っている風味を覆い隠すのではなく、積極的に取り入れることで、加工を最小限に抑えたクリーンラベル製品に仕上げています。

今回の資金調達を終えて、同社は発酵プラットフォームと生産能力の拡大、商業的成長、世界的な製品発売に向けた投資に注力する計画です。自社で生産施設を建設する予定はなく、菌糸体の栽培が可能な受託製造業者と提携しているとのこと。

また、醸造で出た穀物粕など、より安価で持続可能な副産物を原料として使用する技術の開発も行っているといいます。

EU全体のコミットメントを強化する動きに


EIC Fundの議長を務めるSvetoslava Georgievaは、「消費者が美味しい食べ物への欲求と、地球環境や健康のために行動する意欲とを調和させることができる時が来ている」と述べました。

EICの「Work Programme 2024」は、欧州連合(EU)が推し進める研究開発支援プログラム「Horizon Europe」の一環として行われているもので、昨年末には精密発酵のスタートアップ企業や中小企業に対し総額5,000万ユーロ(約80億円)の資金援助を決定

EU加盟国の中には、代替プロテインの柱である培養肉に反対する国も複数見られる中で、EU全体のコミットメントを強化する動きとなっています。

参考記事:
Mushrooms Galore: Mycelium Startup Infinite Roots Bags Record $58M Series B Funding
‘The largest investment in mycelium in Europe…’ Infinite Roots nets $58m to scale ‘asset-light’ operation

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