スイスのFood Brewerがシードラウンドで約8.5億円を調達、細胞培養でカカオとコーヒーの代替品開発
スイスのチューリッヒに本社を置くFood Brewerが、シードラウンドで500万スイスフラン(約8億5,000万円)超の調達を行ったと発表しました。
同ラウンドでは、スイスと米国のファミリーオフィス(富裕層の資産管理を担う非公開会社)のほか、チューリッヒ州立銀行、チョコレートメーカーのMax Felchlinなどの投資家が支援を実施。
新たな資金により、細胞株の開発、および生産施設の拡大へ投資を行います。
持続可能性の問題を抱えるサプライチェーン
細胞培養により生産される食品は、資源集約的な畜産品に代わる環境に優しい選択肢として期待されていますが、動物由来のものだけが生産過程で大きな環境フットプリントを残すわけではありません。
カカオやコーヒーのような植物由来の食品もまた、生産の中では多くの資源を必要とします。どちらの植物も、最初の果実を収穫できるようになるまで数年を要する上、特定の熱帯地域でしか育たず、気候変動の影響を受けやすい植物です。
近年、地球温暖化が及ぼす影響により栽培面積が縮小し、生産量の減少や価格の不安定化につながっていることに加えて、森林伐採と児童労働も大きな問題とみなされるようになってきました。
数週間で植物細胞株を樹立
2021年にYannick Senn、Géraldine Senn、Klaus Kienlにより設立されたFood Brewerは、植物細胞の培養によりカカオ、コーヒー、代替油脂を大規模に生産するプラットフォームの開発に注力。
土地の不足、気候変動、地理的制約、倫理的な懸念など、従来の農業に関連した種々の問題に対処することを目的としています。
同社は植物サンプルから細胞株を樹立し、制御された環境下のバイオリアクターでカカオとコーヒーを培養することに成功。細胞が十分な量に達すると、バイオマスを回収し、乾燥して粉末状に加工します。
加えて、培養に適した細胞を効率的に特定し、新たな細胞株を平均数週間で樹立できるプロセスを編み出し、特許を取得しました。
EUでの販売認可を得てB2B供給へ
Food Brewerは、現在市場で入手可能な製品と同等の価格を実現するため、同じくチューリッヒに拠点を置くスタートアップ企業Fruitful AIとの戦略的提携を実施。植物細胞の成長を追跡する高度なアルゴリズムを活用することで、長期的なコスト効率を高める狙いです。
さらに、ドイツの機械メーカーSteineckerとも提携し、最先端のバイオリアクターをプラットフォームに組み込んでいます。
同社に投資を行った企業の一つであるMax Felchlinは、すでにFood Brewerのカカオパウダーを使ったチョコレートの試作品を開発。米国でも試験生産のための引き合いがあったといいます。
CFOを務めるMathilde Dupinによると、今後3〜4年のうちにEUでの製品化を見込んでいるとのこと。これにはEUの規制当局から新規食品(Novel Food)の認可取得が必要ですが、「承認へのロードマップは明確であり、強い決意を持って取り組んでいる」と語っています。
参考記事:
Food Brewer Secures Over CHF 5M for Cell Cultured Cacao & Coffee
Zurich-based food tech, Food Brewer, closes seed round with over CHF 5 million to continue developing cocoa and coffee alternatives | PPTI
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