スウェーデンのIronic Biotech、精密発酵による植物性ヘムタンパク質の開発で約1.6億円を調達
スウェーデンのフードテック企業Ironic Biotechが、精密発酵によるヘムの開発を加速させるため、プレシードラウンドで100万ユーロ(約1億6,500万円)の調達を行ったと発表しました。
女性の鉄分不足に終止符を打つ
鉄は、赤血球が全身に酸素を運ぶのを助けるタンパク質であるヘモグロビンと、酸素を貯蔵して必要なときに供給するミオグロビンを作るのに使われます。体内で鉄分が不足すると、これらのタンパク質や赤血球を十分に作ることができず、貧血などの症状が生じます。
Ironic BiotechのCEOを務めるNélida Leiva Erikssonは、自身も女性として貧血に悩まされてきた経験から、女性に特に多い「鉄分不足による疲れや倦怠感に終止符を打つ」べく同社を創業。
世界人口の4人に1人(ほとんどが女性)が苦しんでいるといわれる貧血などの諸症状を取り除き、男女間の生産性や所得格差に及ぼす影響をなくすことを目指しています。
また、野菜に含まれる鉄分は、ヘム鉄よりも吸収率が低い「非ヘム鉄」であることから、植物ベースの食生活では鉄の欠乏が起こりやすいという懸念もありました。
今回の調達ラウンドでリードインベスターを務めたNordic Foodtech VCのLouise Heibergは、「鉄分の摂取に関する懸念は、西洋の食生活において赤身肉の消費を減らす上での大きな障壁でもある。Ironic Biotechの新たな原料のおかげで、食品業界は世界的な健康問題に取り組むことができる」と述べています。
2025年の市場化を目標
アニマルフリーのヘムタンパク質開発に取り組む企業は複数あり、最も知られているのは植物性代替肉大手のImpossible Foods。大豆の根に存在する大豆レグヘモグロビン由来のヘムを精密発酵により生産し、これを風味付けに用いることで、本物の肉に近い製品を生み出しています。
競合のMotif FoodWorksは、牛の筋肉組織に含まれるものと同じミオグロビンを精密発酵で生産。ベルギーのPaleoは拡大するペットフード市場に可能性を見いだし、精密発酵ミオグロビンをペットフードに使用する世界初の特許申請を実施しています。
Ironic Biotechは、生物学的に利用可能な鉄分を多量に含む植物性タンパク質を発見しました。これを精密発酵により生産した同社の原料は、肉と同等の鉄吸収率を持ち、鉄分が豊富なため赤みがかった色をしているとのこと。原料として用いると濃度が薄まるため、食品自体の色を変えることはありません。
タンパク質自体に味はなく、食品成分のほか、鉄分を補うサプリメントとしても利用可能。粉末、冷凍、顆粒のいずれにも加工でき、室温で長期保存も可能です。
同社は今後、食品やサプリメントのメーカーと提携して原料供給を行う計画で、2025年の市場投入を目標としています。
参考記事:Ironic Biotech Bags €1M to Develop Iron-Rich Plant Proteins via Precision Fermentation
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