米国特許商標庁、Motif FoodWorksの異議申立てを受け、Impossible Foodsが保有する特許の一部見直しを決定

米国特許商標庁(USPTO)が、特許侵害でImpossible Foodsに訴えられているMotif FoodWorksの異議申立てを受け、Impossible Foodsに付与された特許を見直すことに同意したと発表しました*1

過熱する法廷闘争


いずれも米国市場で植物性代替肉を手掛ける両社。これまでの経緯としては、Impossible Foodsが昨年初め、Motif FoodWorksが同社技術の盗用により特許を侵害したと主張して、連邦訴訟を提起。Motif FoodWorksは、これに対し控訴していました。昨年末には、Impossible Foodsの保有していた欧州特許が、欧州特許庁により取り消されています*2

行政特許判事のDonna M. Praissは今月、Motif FoodWorksが「当該特許の1つ以上の請求項に関して勝訴する可能性があると考えられるため、すべての請求項とその根拠について当事者系レビュー(一度登録された特許を無効にすることを求める手続き)を行うことを決定した」と述べました。

統計によると、当事者系レビューで最終判断が下されたケースのうち80%で、1つ以上の請求項が無効とされているといいます。当事者系レビューの実施により、Impossible Foodsにとっては極めて重要な特許申請が、大幅に中断または無効化される可能性があります。

ヘムタンパク質の使用が争点に


審査中の特許のタイトルは、「Methods and Compositions for Affecting the Flavor and Aroma Profile of Consumables(消耗品の風味と香りに影響を与える製法および成分)」。とりわけ調理中・調理後に感じられる、代替肉の風味と香りを改善することを目的としています。

Impossible Foodsは、大豆の根に存在するタンパク質「大豆レグヘモグロビン」に含まれるヘムを精密発酵で大量生産し、これにより植物性代替肉に本物の肉のような風味を与えています。一方、Motif FoodWorksのヘムタンパク質「Hemami」も精密発酵によるものですが、こちらは牛の筋肉組織に含まれるミオグロビンと同一のものです。

Motif FoodWorksは、ヘムタンパク質は、肉やその代替品の風味や香り付けのために何十年にもわたって使われてきた原料であり、Impossible Foodsが特許を取得することはできないと主張しました。

Impossible Foodsが勝利すれば、植物性食品業界では誰もヘムを使った実験ができなくなるといい、独占を懸念。「植物性代替肉の分野を成長させることよりも、タンパク質の独占権を確保することを優先している」と強く非難し、PRキャンペーンを展開しています。

Impossible Foodsは「競争関係は歓迎するが、技術の盗用は見過ごせない」と、すでに保有している強力な特許ポートフォリオを盾に、強気な訴訟戦略をとる構えです。

*1 https://developer.uspto.gov/ptab-web/#/search/documents?proceedingNumber=IPR2023-00206
*2 https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2022/12/07/Heme-proteins-Impossible-Foods-EU-patent-revoked-US-IP-dispute-with-Motif-FoodWorks-ramps-up

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