ビーンレスコーヒーを開発する米Atomo Coffeeが、大型ロースタリーをオープン
米国・シアトルを拠点とするAtomo Coffeeが、アップサイクルしたナツメヤシの種などからビーンレスコーヒーを生産する大型のロースタリー(焙煎所)を開設しました。
サントリーも出資する代替コーヒー
Andy KleitschとJarret Stopforthが2019年に設立したAtomo Coffeeは、すでに缶入りコールドブリュー製品の製造を行う小規模な施設を運営していますが、エスプレッソの技術でブレークスルーに達したことから、エスプレッソパウダーの生産へと軸足を移しました。
昨年10月に豆を使わない世界初のエスプレッソパウダーをニューヨークのGumption Coffeeで発売した後、米国各地で取り扱い店舗を着実に増やしています。
33,000平方フィート(約3,070平方メートル)の新施設をフル稼働させれば、年間400万ポンド(約1,800トン)のエスプレッソパウダーの生産が可能。約2,000のコーヒーショップに供給することができ、米国内のスペシャルティコーヒーショップにより広く展開するための重要な足掛かりとなります。
同社は「BOSS」を所有するサントリーからも昨年11月に出資を受け(金額は非公開)、累計5,300万ドル(約82億7,000万円)を調達していますが、新施設の成功により調達を増やせれば、さらに10倍の生産能力を持った工場の建設も検討する計画です。
スタートアップの製品開発動向
牛肉や羊肉、チョコレートに次いで排出量の多い食品* であるコーヒーは、動物性食品と同様、より地球に優しく、気候変動の影響を受けにくい代替品が求められる分野となっています。
Northern Wonder(オランダ)やMinus(米国)がAtomo Coffeeと同じく植物由来原料の探索を進めており、前者はルパン豆、大麦、ひよこ豆など、後者はナツメヤシの種、チコリ、ヒマワリの種、キャロブ(イナゴ豆)、レンズ豆、ブドウの種を原料に使用。
先日カカオフリーチョコレートの拡販でカーギルとの商業契約を締結した米Voyage Foodsも、外食業界向けの事業としてビーンレスコーヒーを開発しており、こちらはひよこ豆と米のもみ殻を主な原料としています。
ベーカリーで廃棄になったパン、おから、ビール粕(BSG)などを再利用するシンガポール企業のPreferは、今年2月にシードラウンドで200万ドル(約3億1,200万円)の調達を行いました。
ブラックコーヒーの苦手な人でも飲める味に
Atomo Coffeeは、創業当初はスイカとヒマワリの種を使用していましたが、現在ではナツメヤシの種、ラモンの実(マヤナッツ)、ヒマワリの種エキス、果糖、エンドウ豆タンパク質、雑穀、レモン、グアバ、脱脂フェヌグリーク(スパイスの一種)、重曹を使用。
カフェインレス緑茶の製造後に残ったカフェインを加えた製品と、そのままでノンカフェインに仕上げた製品があります。
廃棄予定だったナツメヤシの種を農家から譲り受け、洗浄、乾燥、粒状化してロースタリーで再利用。ナツメヤシの種そのものにはコーヒーの味はしませんが、マリネ液に漬け込み熱を加えることでメイラード反応と呼ばれる反応を起こし、求めるコーヒー成分を生成すると説明されています。
CEOのKleitschは、消費者の大半がコーヒーの酸味や苦味を好まず、クリームや砂糖でそれを覆い隠していると指摘。同社のコーヒーは「普段はブラックコーヒーが苦手という消費者でもそのまま飲むことができる一方、ミルクやコーヒーフレッシュを加えてもダマにならない処方設計にしており、どちらでも楽しんでもらえる」と述べています。
参考記事:
Beanless Coffee Startup Atomo Opens Large Roastery as Upcycled Espresso Brews Up Specialty Café Partnerships
Futureproofing your Morning Joe? Atomo opens ‘beanless’ coffee roastery in Seattle
* Our World in Data
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