シンガポールのScaleUp Bio、精密発酵食品の製造ライセンスを取得

液中発酵、精密発酵の開発製造受託(CDMO)サービスを提供するシンガポール企業のScaleUp Bioが、同国西部のトゥアス地区に保有するパイロットプラントについて、シンガポール食品庁(SFA)からの食品製造ライセンスを取得したと発表しました。

発酵企業の市場化を加速


世界的な農業関連企業アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と、シンガポールの投資会社Temasekの子会社Nurasaとの合弁会社として2022年に設立されたScaleUp Bioは、ラボスケールから市場までのパイプラインを提供し、アジアをはじめとした市場への参入を支援。

およそ2,300平方メートルの敷地面積を誇るこのパイロットプラントは、食品グレード専用の発酵生産を行う拠点となり、食品企業に最大1万リットルの発酵サービスと、関連する下流工程の加工能力を提供します。

FSAの審査は、インフラや施設の検査を通して、確立された安全基準を満たして食品製造が行われていることを保証するもので、同社はこのライセンス取得により、世界中の食品企業に1万リットルの発酵サービスを提供する数少ないCDMOとして承認されたと述べています。

Food Frontierが昨年発行したレポートによると、シンガポールは代替プロテインの市場として、韓国、日本、タイをしのぎ、アジアで2番目に有望な国と位置付けられていました(1位は中国)。

フードテック業界では25を超える外国企業がシンガポールに進出しており、アジア太平洋地域で代替プロテインを手掛けるスタートアップ企業の4分の1(24%)がシンガポールに拠点を置いています。

規制認可においても、培養肉や精密発酵製品ですでに複数の認可が出されており、スタートアップ企業の有望な進出先となっています。

研究所と大規模施設の二拠点体制


ScaleUp Bioは、昨年11月に最初の顧客(Nourish Ingredients)獲得を発表し、建設中の新施設の見学も開始していました。

オーストラリア企業のNourish Ingredientsは、代替肉・乳製品に用いる脂肪を精密発酵で生産する技術を開発しており、アジアでの成長を狙ってCDMOの活用を計画。同社の代替脂肪「Tastilux」は、すでにSFAの規制認可プロセスに入っています。

ScaleUp Bioはさらに、代替パーム油を生産する米国のC16 Biosciences、マレーシアの植物性代替肉メーカーUltimeat、藻類と菌糸体から代替プロテイン原料を生産するシンガポールのAllium Bioとの間でも、それぞれ予備的合意に至ったとのこと。

また、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)管轄下のシンガポール食品・バイオテクノロジー・イノベーション研究所(SIFBI)と共同で、Nurasaの「Food Tech Innovation Centre」内に100リットルの発酵槽を備えた研究所「Fermentation Joint Lab」も運営。

こちらでも、シンガポール企業のAllozymesAlgrow Biosciences、カナダのTerra Bioindustries、英国のArgento Labsなどから関心を集め、契約を結んでいます。

参考記事:
ScaleUp Bio | LinkedIn
ADM’s ScaleUp Bio Secures Food Manufacturing License for Novel Proteins in Singapore
ScaleUp Bio Obtains Food Manufacturing Licence for Precision Fermentation in Singapore
Nurasa Opens Food Tech Innovation Centre in Singapore to Make Better Alternative Proteins, Quicker

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