BioCraft Pet Nutritionの培養マウス肉、高級ペットフードと同等の価格に
米国とオーストリアを拠点にペットフード用の培養肉を開発するBioCraft Pet Nutritionが、従来の高級ペットフードと同等価格の実現という重要なマイルストーンに到達したことを発表しました。
低価格と高栄養を両立
BioCraft Pet Nutritionは、犬や猫用の培養マウス肉について、1ポンドあたり2.00〜2.50ドル(キロ単価693〜867円)の販売価格を達成したとのこと。ハイエンド向けペットフードとの価格差をなくし、市場における競争力を高めたとしています。
The Good Food Instituteは以前の調査で、ヒトの食用としての培養肉は2030年までに1ポンドあたり2.92ドル(キロ単価1,012円)の生産コストを達成し、コスト競争力を持つ可能性があるとしていましたが、このベンチマークを下回る成果を得ました。
創業者でCEOのShannon Falconerは、「ペットフード業界における培養肉普及の足かせとなっていたのは、低価格を実現することとペット用の充実した栄養価を持たせることだったが、当社はその両方を達成できた」とコメント。
2026年初頭までに、ペットフードブランドとの共同で培養肉製品を発売する計画です。
培地の再利用化でコストを削減
バイオリアクター内で動物細胞に栄養を供給する培地は、「成長因子」と呼ばれるタンパク質を含んでおり、通常1リットルあたり数百ドルという高価なもの。
BioCraft Pet Nutritionは従来使われてきたウシ胎児血清(FBS)からいち早く脱却して植物由来成分で構成された培地を開発し、規制当局の承認も得ました。
細胞に与える物質がすべて飼料として認可されているため、下流工程で培地と細胞の分離が不要に。これにより、動物細胞のみが作り出せるものの、活発に成長する細胞によって周囲の環境に放出されてしまう主要な水溶性栄養素(タウリンなど)を保持することができるメリットもあります。
同社はコスト削減に向けた研究開発の結果、細胞培養後にまだ栄養を豊富に含んでいる培地を廃棄する代わりに、最終製品の一部として再利用するという方法を開発。廃棄物をなくし、培地の入手や廃棄にかかっていたコストを削減しました。
さらに、特別な処方の培地をそのまま最終製品に組み込むことで、培養肉の栄養プロファイルが強化され、追加コストなしで製品に付加価値をつけることが可能となっています。
商用化が加速する培養ペットフード
Research and Marketsの最新レポートによると、世界のペットフード市場は2023年時点で1,268億ドル(約20兆円)と評価され、2030年には1,771億ドル(約28兆円)に拡大する見込み。
しかしながら、持続可能性と動物福祉に対する消費者意識の高まりにより、ペットフード業界でも植物性や微生物タンパク質、培養肉など、従来の肉に代わる代替品への需要が高まり、開発が加速しています。
昨年、BioCraft Pet Nutritionは培養鶏肉原料の開発に成功したと発表しました。チェコのBene Meat Technologiesと英国のMeatlyは、欧州でペット用培養肉製品の発売に向けて順調に準備を進めています。
ドイツのペットフードメーカーDr. Clauder’sは、先月開催されたペット見本市「Interzoo 2024」で、米国のCalystaが生産する空気由来タンパク質「FeedKindPet」を使用した世界初の犬用おやつを披露。
VEGDOGは、MicroHarvestの微生物タンパク質を使用した製品を同じイベントで発表しました。
参考記事:
BioCraft’s Cultivated Ingredients Achieve Price Parity with Premium Meat for Pet Food
BioCraft Pet Nutrition’s Cultivated Mouse Meat Now Costs the Same as Premium Pet Food
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