フランスの培養フォアグラメーカーGourmeyが、EUほか4カ国で規制当局への認可申請を実施

培養フォアグラを開発するフランスのスタートアップ企業Gourmeyが、シンガポール、米国、欧州連合(EU)、英国、スイスで培養鴨肉の認可申請を完了したと発表しました。

EUでは培養肉の認可申請が提出されたのは初で、業界にとって大きなマイルストーンとなる出来事です。

複雑かつ厳しいEUの新規食品規制


パリを拠点とするGourmeyは、シンガポール食品庁(SFA)米国食品医薬品局(FDA)、欧州委員会および欧州食品安全機関(EFSA)英国食品基準庁(FSA)、そしてスイス連邦食品安全獣医局(FSVO)に申請書類を提出。

同社の培養鴨肉は、動物福祉と環境の両面から問題となっているフランスの珍味、フォアグラの製造に使用されるもの。2026年までに、レストラン向けの提供開始を予定しています。

現在までに培養肉の販売を認可しているのは、シンガポール、米国イスラエル。加えて英国が今月、ペット向けの培養肉の生産・販売にゴーサインを出しました。

EUの新規食品(Novel Food)* に係る規制枠組みは非常に複雑かつ厳しいことで知られており、少なくとも18カ月程度はかかるとされています。

このため、多くの企業は当初の展開先にほかの市場を選択してきましたが、Gourmeyが道を切り開くことができれば、追随する企業も増加すると予想されます。

* 参考:EUの新規食品(Novel Food)規制について

倫理・環境面で問題を抱えるフォアグラ


世界三大珍味の一つとして知られるフォアグラは、ガチョウやアヒルに強制給餌(ガヴァージュ)を行うことで作られるため、生体の肝臓を傷つけ、肝リピドーシスという痛みを伴う病気を引き起こす可能性があります。

このような動物福祉への懸念から、インド、アルゼンチン、ドイツ、イタリア、ノルウェー、ポーランド、トルコなど、12カ国以上がフォアグラの生産を禁止しており、当のフランスでさえ消費者の4分の3が強制給餌に不快感を抱いているとも。

そればかりか、過剰な餌となるトウモロコシを大量に栽培することによる、気候への悪影響もあります。

それでもこの珍味を好む支持者は絶えず、昨日開幕したパリオリンピックでも、VIPゲストに提供される料理の中にフォアグラが含まれている様子。

今大会では提供される食品の50〜60%が植物性で「最も持続可能な」大会と謳われているにもかかわらず、フォアグラが供されるのは矛盾していると抗議活動が巻き起こっています。

ハイエンド市場に代替品を供給


Nicolas Morin-ForestJérôme CaronAntoine Davydoffの3人がフランス初の培養肉企業として2019年に創業したGourmeyは、これまでに公的資金と民間投資を通じて6,500万ユーロ(約108億円)を調達。

2022年にはパリに46,000平方フィート(約4,300平方メートル)の生産施設を開設するため、シリーズAラウンドで記録的な4,800万ユーロ(約80億円)を確保しました。

フォアグラの代替品開発はこれまでになかった動きですが、培養肉にかかるコストは従来の食肉と比べて大幅に高くなっているのが現状のため、ハイエンド市場をターゲットとすることは理にかなった戦略といえるでしょう。

EU15カ国の市民16,000人を対象とした最新の大規模調査では、規制当局から安全性に関するお墨付きが得られれば、過半数が培養肉を喜んで受け入れ、新しい食品を試してみたいと考えていることが判明しました。

美食の伝統という名目のもと、培養肉の禁止を求める議員も存在するフランスで、市場の支持獲得に期待がかかります。

参考記事:
French Cultivated Foie Gras Maker Gourmey Files for Regulatory Approval in EU
EU’s first application for cultivated meat is for French foie gras – POLITICO
Paris 2024: Animal welfare organizations demand that foie gras be removed from VIP guest menus

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