欧州委員会、ハンガリーの培養肉禁止案を「不当」と判断
欧州連合(EU)の政策執行を担う欧州委員会(EC)が、ハンガリーの培養肉禁止案を「不当」なものであり、欧州単一市場にとって有害である可能性があるとの判断を下しました。
独自の法制定を制限するTRIS制度
欧州委員会によると、ハンガリーが今年7月に打ち出したこの禁止措置は、欧州食品安全機関(EFSA)による科学的評価を含む、EUレベルで統一された新規食品の認可手続きを混乱させる恐れがあるとのこと。
また、欧州委員会と一部の加盟国は、ハンガリーが培養肉禁止の根拠となる証拠を提示していないことを強調しました。
EUには、技術規制情報システム(TRIS)と呼ばれる制度が存在します。これは、EUの単一市場に影響を及ぼす可能性のある法案が、ほかの加盟国や欧州委員会の同意を得ることなく各国の議会で可決されることを防ぐための仕組みであり、今回の欧州委員会の判断もTRISに基づく評価を受けてのものとなります。
欧州委員会はハンガリーに対し、提起された質問への正式な回答を来年1月中旬までに行うよう要請。この義務を遵守しなかったり、異議申し立てを考慮せずに禁止を進めたりした場合、欧州司法裁判所への提訴もあり得ると警告しています。
複数の加盟国が禁止措置に反対
昨年、イタリアが同様に培養肉を禁止した際、政府はTRISの手続きを完了させることなく法律を成立させました。
GFI EuropeのFrancesca Gallelliは、「ハンガリーの措置案は、イタリアの法律がTRISの手続きに則っていればそうなっていたように、EU法の原則に反している。特に、培養肉がまだ欧州の消費者に提供されていないことを考慮すればなおさらだ」とコメント。
このような禁止は科学的根拠に基づいたものではなく、イタリアの法律に関しても、「TRIS手続きに違反して国内で成立した後にEUに通知されたものであるため、適用は認められない可能性がある」と述べています。
ハンガリーの措置案について、EU加盟国のスウェーデンは、培養肉がヒトの健康や環境にもたらすというリスクの評価結果が示されていないと指摘。オランダは、ほかの加盟国で合法的に上市された製品が恣意的な制限を受けることがあってはならないとし、培養肉などの技術革新に対する欧州の厳格な食品安全性評価を強調しました。
チェコは、禁止案はEU単一市場内での商品の自由な移動を妨げるものであり、自由貿易の原則に反すると指摘した上で、「培養肉を含む食品技術に関するイノベーションを促進すること」への支持を表明。
リトアニアは、代替プロテインの可能性を強調する詳細な意見書を提出し、世界人口が2080年代半ばまでにピークに達し、より多くのタンパク質が必要になると主張しました。米国、イスラエル、シンガポールなどの国々がすでに培養肉製品の販売を許可していることから、「EUが同分野の技術開発において競争力を維持し、世界レベルの規制と基準を整えるべきだ」としています。
消費者の選択の自由を保証すべきとの声も
GFI Europeの委託によりYouGovが行った7月の意識調査では、EUの消費者の多くは、規制当局が食用として安全と判断した後に培養肉を食べるかどうかを自身で決めたいと考えていることが明らかになりました。
欧州の消費者の多くが、「安全性が認められた」培養肉の販売には賛成しています。中でも支持率が高かったのは、ポルトガル(69%)、ドイツ(65%)、オランダとオーストリア(63%)。続いてデンマーク(62%)、チェコ(61%)、スペイン(58%)、ベルギー(57%)と、半数以上が培養肉を支持している国も多く見られました。
GFI EuropeのSeth Robertsは、「培養肉がEUで販売されるためには、世界で最も厳格な規制プロセスの一つを通過しなければならない。この調査結果は、厳しい審査を経て一旦認可された以上、それを食べるかどうかは消費者が決めるべきだという人々の考えの表れだ」と語っています。
参考記事:
ハンガリーのTRIS通知文書 | 欧州委員会
ProVeg welcomes EU assessment of Hungary’s proposed cultivated meat ban | ProVeg International
EU Commission Deems Hungary’s Proposed Cultivated Meat Ban ‘Unjustified’”
EU Commission & Member States Call Hungary’s Proposed Cultivated Meat Ban ‘Unjustified’
Commission and member states reject Hungarian ban on cultivated meat – Euractiv
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