昨年の判決から一転、英国で植物性乳製品に対する「ミルク」の表示が禁止に
英国の控訴院(The Court of Appeal)が、植物由来の製品のラベル表示に「ミルク」の表現を使ってはならないとの判決を下しました。
この問題を巡っては、スウェーデンのオーツミルク大手Oatlyが昨年、マーケティング目的での使用を認められたところでしたが、それとは真逆の判決となっています。
1年前の判決から一転
英国高等法院は昨年12月、英国の乳業団体Dairy UKの提起を退ける形で、Oatlyが製品パッケージに記載していた表現「Post Milk Generation」の使用継続を承認。しかしながら、今回の控訴審によりこの判決が覆され、実質的に英国内のすべての植物性製品に対して、乳製品を想起させる用語の使用が禁止されることとなりました。
禁止の根拠としては、「ミルク」は乳製品にのみ使用される法的に保護された用語であるため、Oatlyが商標登録している上記のスローガンを製品パッケージに使用することはできないとのこと。
このような用語を用いることは、英国の商標規則と、2013年にEUで制定された農産物の販売表示に関する規制に違反するとしています。
前回の判決では、Oatly製品の「ミルク」の文字がマーケティングを目的としたスローガンの一部であり、製品自体の名称として使用されたわけではない(製品名は「Oat Drink」)ことから、消費者を欺くものではないとの判断でしたが、用語の使用が拡大解釈された結果、禁止に改められました。
植物性ミルク業界にとって大きな打撃に
現行の欧州連合(EU)の規則では、代替肉製品に食肉関連用語(ソーセージやベーコンなど)を表示することが許されている* 一方、代替乳製品には同様の表示が認められていません。
英国は、2020年のブレグジット後もこのEU法に従っており、同様の禁止措置を継続。Oatlyのスローガンは、英国知的財産庁(UKIPO)への商標登録も実施されていますが、食品・飲料ではなく、Tシャツにのみ使用が許可されています。
控訴院ではまた、製品への「ミルクフリー(milk-free)」という表現の使用可否についても検討がなされましたが、今回の裁判で結論を出す必要はないと判断されたようです。
Oatlyはまだ最高裁に上告する余地を残してはいるものの、この最新の判決は、英国の植物性ミルク業界にとって大きな打撃。控訴院の下した判決は、その他すべての裁判所に対して拘束力を持つため、今後どのブランドであっても乳製品関連の用語を用いることは事実上違法となります。
Oatly UK & Irelandの代表Bryan Carrollは、「法的措置により優位に立とうとする酪農大手の試みは、消費者の利益に反し、植物由来の製品にとって不公平な競争条件を作り出し、そして何よりも悪いことに、より持続可能な食生活への進歩を遅らせている」と非難。「我々は常に正しいことのために立ち上がり、選択肢を検討している」とコメントしています。
* 参考:植物性食品のラベル表示論争に新展開、EU最高裁がフランスの禁止令制定を阻止
参考記事:
In A U-Turn, UK Court Bans Use of ‘Milk’ on Oatly & Other Plant-Based Dairy Labels
‘Post Milk Generation’ no more: Oatly loses right to call its drinks ‘milk’ in landmark UK ruling | Euronews
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