培養ペットフード開発のMeatly、独自設計のバイオリアクターで95%のコスト削減に成功

英国の培養肉企業Meatlyが、新たに開発した容量320リットルのパイロットスケール・バイオリアクターを用いて、試運転と最初の細胞増殖試験を完了したと発表しました。

医薬品用バイオリアクターの制約から脱却へ


アーリーステージの培養肉企業は、大規模細胞培養に適した食品グレードの専用装置が存在しないため、製薬業界から供給されるバイオリアクターの転用に頼ってきました。

これら従来の装置は、厳格な無菌性、精度、規制基準を満たすよう作られており、大幅なコスト高が避けられません。

製薬部門は、政府からの各種補助金、研究開発奨励金、高い値入れの恩恵を受けているとされ、こうした背景から高価なバイオリアクターが経済的に実現可能なものとなっていますが、培養肉業界は逆に、消費者に普及させる必要から生産コストの削減を迫られているのが現状です。

Meatlyの研究開発チームが独自に設計した新たなバイオリアクターの価格は、約12,500ポンド(約242万円)。培養肉業界で現在使用されている一般的な医薬品グレードのバイオリアクター(約25万ポンド=約4,850万円以上)と比べて95%安くなっています。

同社のCSO(最高科学責任者)を務めるHelder Cruzは、「業界がここまでのコスト削減を達成することに多くの批評家が疑問を投げかけてきたが、それが間違っていることを証明できて嬉しく思う」と述べました。

すでに新たな資金調達ラウンドを開始しており、得た資金で2万リットルのタンク開発も計画しています。

培地コスト低下にも大幅な進展


Meatlyはまた、細胞の成長を促進する栄養素を混合した培地の改良にも取り組み、血清などの動物由来成分、ホルモン、抗生物質、成長因子を一切含まないタンパク質フリーの培地を開発

食品グレードの原料のみを使用して、アルブミン、トランスフェリン、インスリン、そしてすべての成長因子といった高価な成分の置き換えに成功したといいます。

発表によると、このコストが現在1リットルあたり22ペンス(約43円)にまで届き、規模を拡大すればさらに同1.5ペンス(約3円)まで下げられる見込み。業界で野心的なベンチマークとされる1リットルあたり1ポンド(約194円)を大きく下回る価格です。

今年初め、MeatlyはTHE PACKとの協働で世界初の培養肉入りペットフード「Chick Bites」を数量限定で発売し、培養肉の最初の商業化事例の一つとして歴史に名を刻みました。

この価格は50g入り3.49ポンド(約680円)で、キロ単価に直すと69.8ポンド(約13,500円)。Good Boyが英国で販売している鶏肉をベースとした従来のドッグフード(キロ単価23.1ポンド=約4,480円)と比較すると約3倍高くなっていましたが、大幅なコストダウンでこの水準に近づけられるかもしれません。

低コスト化の鍵を握るバイオリアクター改良の取り組み


コスト削減のためバイオリアクターの改良に着手している企業はいくつかあり、先日米国で培養豚脂肪の認可を取得したMission Barnsは、バイオ医薬品用の単細胞懸濁培養タンクとは一線を画す、培養肉生産用に最適化されたバイオリアクターを開発。生産をより効率的に、容易に、そして安価にスケールアップできるようになったとしています。

イスラエルのEver After Foodsは、業界標準の10分の1以下の規模の装置で、培養肉の商業生産が行えるシステムを構築。B2Bで技術提供を行う「イネーブラー」としての地位確立を目指し、加工装置メーカーのBühler Groupとも提携しました。

ドイツ企業のThe Cultivated Bは、わずか数週間の納期と斬新な装置設計による使いやすさを実現した装置をB2Bで供給しています。

参考記事:
Meatly creates new technology to cut cultivated meat costs | The Grocer
Meatly’s Low-Cost Bioreactor Could Slash Cultivated Meat Production Expenses by 95%
Meatly ‘Proves Critics Wrong’ with Dramatic Cost Reductions for Cultivated Pet Food

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