培養肉技術は伝統的な畜産を凌駕するペースで進展、コスト競争力が早期に実現する可能性も —GetFocusレポート

テクノロジーに関する予測を行うオランダ企業GetFocusが、培養肉の未来についての新たなレポートを発行しました。
培養肉関連の技術は伝統的な畜産業に比べて急速に進化しており、予想より早い段階でコスト競争力のある生産が実現する可能性を示しています。
バイオリアクターの能力は3.6年ごとに倍増
GetFocusは、人工知能(AI)を統合してグローバルに集められたデータを評価し、技術開発の進捗を測る独自の指標「技術改良率(TIR)」に基づいた分析を実施しました。
それによると、培養肉生産のコア技術であるバイオリアクターの能力は3.6年ごとに倍増しており、伝統的な畜産の改良ペースを大幅に上回っているとのこと。2013年以降、培養肉生産に使われるバイオリアクターは毎年20%の割合で改善を続け、同等の進歩に4~5年を要する畜産業のスピード感を大幅に上回っています。
CEOを務めるJard van Ingenは、「多くの人が培養肉をいまだSF世界の出来事とみなしている中、データは技術開発の急速な進展を浮き彫りにしている」と強調。
生産コストの劇的な削減を指摘し、2013年にオランダのマーク・ポスト博士(Mosa Meatの創業者)により初めて披露された際には33万ドル(約4,800万円)かかっていた培養肉ハンバーグが、2019年にはわずか12ドル(約1,700円)未満にまで低下したと説明しました。
細胞培養食品を市場に投入するための技術的基盤は着実に整いつつありますが、特にハンバーガーやナゲットなどの製品において進展が顕著で、筋組織の培養技術は9段階で表される技術成熟度レベル(TRL)で7~8に達しており、脂肪細胞の培養技術はTRL6と評価されています。
規制の動きを注視し、早期参入を目指す必要性
現在、世界の培養肉企業は約170社を数え、累計で30億ドル(約4,370億円)を超える投資を引き寄せています。規制当局の認可も相次いでおり、2020年のシンガポールを皮切りに、2023年に米国、2024年にイスラエルと香港、今年に入ってオーストラリアとニュージーランドでも販売が認められました。
イノベーションを牽引する主要地域の分析では、米国と中国が発明においてリードしているとのこと。イスラエルとオランダも注目すべき存在であり、技術開発と規制認可の両面で早期参入の優位性を有しているとされています。
レポートでは、コスト低下、スケールアップ、消費者受容の確保といった課題は認められるものの、培養肉による革命の原動力となる技術には急速な発展が見られ、広範な市場化にも近づいていると結論。
企業が成功する道として、短期的に実現が可能な技術(例:ひき肉製品、モジュール式のバイオリアクターシステムなど)の開発を優先させること、上述の主要地域で戦略的な提携関係を築くこと、規制の動きに目を配り可能な国で早期参入を目指すことの3点を挙げています。
参考記事:
GetFocus | LinkedIn
Cultivated Meat Technologies on Track to Outpace Traditional Farming, Study Finds
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