米国のガス発酵スタートアップNovoNutrients、調達難を理由に資産売却へ

米国・カリフォルニア州のガス発酵企業NovoNutrientsが、投資環境の変化による影響で、資産の売却に踏み切ったと発表しました。直近では、同じくガス発酵を手掛けるオーストリアのArkeonも破産申請を行っています。
今月末まで保有資産への入札を受け付け
NovoNutrientsは、同種の企業の中では比較的古く、2017年に設立されました。ガス発酵と呼ばれる革新的な技術で一定の注目を集め、昨年行ったシリーズAラウンドでの1,800万ドル(約26億6,000万円)を含め、これまでに2,700万ドル(約39億9,000万円)の資金を調達しています。
しかしながら、「投資環境が変化する中で資本集約度の高さが問題となった」といい、債権者の利益を保護するための譲渡手続き(ABC)を開始。これは、財政難に陥った企業が知的財産を含む資産を第三者に売却することを可能にするもので、正式な破産に代わる措置となります。
売却される同社の資産には、長年の運用データを備えたラボスケール・パイロットスケールの設備一式のほか、ガス発酵と炭素利用をカバーする米国特許、独自の非遺伝子組み換え微生物株、そしてバイオリアクターとスケールアップ、下流工程に関する企業秘密、「Novotein」および「Novoceuticals」ブランドといった知的財産が含まれます。
資本集約度の高い設備がネックに
NovoNutrientsの技術は、産業施設から回収したCO₂に水素を加えた混合ガスを用いて独自の微生物株を発酵させ、微生物が生成したタンパク質を収穫するものです。
ほとんどの発酵企業の施設にある大きなタンクの代わりに、細長いループ状のシリンダーを用いて、ガスの混合に必要なエネルギーを抑える手法を開発。
当初は家畜と魚の飼料をターゲットに据えていましたが、その後ヒトの食品とペットフードもポートフォリオに加えました。
今年初めまで同社のCEOを務めていたDavid Tzeは、「CO₂は、素材や化学品、そしてタンパク質を作り出すための、将来のバイオものづくりにおける重要な投入物だ」と説明。
微生物の餌となる糖の代わりにガスを使用することで、投入コストを下げ、滅菌工程を簡素化し、廃棄物や副産物となっていたガスの活用が可能になります。
ただし、気体と液体を効果的に混合させ、ガス取り扱い時の安全対策に最適化された特殊なバイオリアクターは、資本コストを増加させる可能性も。技術のスケールアップにはコストがかかり、手頃な価格で持続可能なグリーン水素の調達も課題でした。
Tzeは「メガトン規模のCO₂を回収して世界を養うことを目指していた中で、自分たちが思い描いていたものとは違った結果になってしまった」とコメント。それでも、この技術が機能するのはパイロットスケールで証明済みで、「十分な資本のあるしかるべき人の手に渡れば、炭素とタンパク質に対する人々の考えを一変させられるだろう」と語っています。
参考記事:
David Tze | LinkedIn
Gas fermentation startup Novonutrients calls it quits, seeks buyer for assets: ‘The technology’s potential remains unchanged’
Gas Protein Startup NovoNutrients to Sell Assets, Citing Investment Challenges
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