ビル・ゲイツとノボ ノルディスク、CO₂を食料に変える取り組み「Acetate Consortium」を延長し、約37億円を追加投資
ビル＆メリンダ・ゲイツ財団とノボ ノルディスク財団（Novo Nordisk Foundation）が、2023年より実施してきたCO₂をタンパク質に変換する取り組み「Acetate Consortium」に1億6,220万デンマーク・クローネ（約37億5,000万円）の追加投資を行い、期間を2年間延長しました。
2年以内に食品プロトタイプの開発へ
「Acetate Consortium」が始まったのは、2023年6月。ビル・ゲイツの立ち上げた慈善団体が、オゼンピック（2型糖尿病治療薬）で知られるデンマークの製薬大手を保有する財団と提携し、2億デンマーク・クローネ（約46億2,000万円）を投じたプロジェクトを開始しました。
目的は、CO₂を原料に用いて栄養価の高い食品を生産すること。今回の2年間の延長では、第1フェーズで開発された技術を拡大して、プロトタイプの生産を目指します。
ノボ ノルディスク財団の副社長Claus Felbyは、「コンソーシアムが2年前に活動を始めた当時、CO₂から食品を作るという発想はまだSF映画の世界の話のように思えたが、今後2年以内に消費者が実際に試食できる食品プロトタイプが登場する見込みだ」とコメントしています。
酢酸塩を代謝する微生物を開発
プロジェクトのベースとなっているのは、微生物のガス発酵によってタンパク質を生み出す技術。ただし、微生物の餌として通常使用される糖の代わりに、コンソーシアムはCO₂由来の酢酸塩（acetate）を用いる方法を模索してきました。
糖を避けることは、その原料となる作物の栽培を減らすことにつながるため、広大な農地が不要になり、気候変動の緩和と食料不足の解消に寄与できると期待されます。
酢酸塩は、電気化学プロセスを通じて回収したCO₂から調達されるもので、これにより排気ガスを貴重なタンパク質へと変えることが可能になります。
プロジェクトの第1フェーズでは、CO₂を酢酸塩へ変換する統合プラットフォームを開発。酢酸塩のみを栄養源とし、タンパク質を40％以上含む微生物株を創出しました。
さらに、デンマーク・オーフス大学に酢酸塩生産用のパイロット施設が完成。プロセスの主要なコスト要因として、電力とインフラ投資が特定されています。
未来の食の実現に向け研究者、企業、シェフが連携
第2フェーズには、ノボ ノルディスク財団のCO₂研究センターやNovonesisのほか、食品コングロマリットのOrkla Foods、エネルギー転換技術を手掛けるTopsoe、そして複数の大学を含む10のメンバーが参加。
コペンハーゲンにあるミシュラン2つ星レストラン「Alchemist」の料理長Rasmus Munk（ラスムス・ムンク）が設立した食品イノベーションセンター「Spora」も新たに加わりました。
Sporaの役割は、科学による研究成果を「ディナーのように仕上げる」こと。Munkは「第1フェーズで開発された技術は、食品生産の在り方を変革し得る。これを栄養価が高く、そして何より美味しい未来の食材へと昇華させるのが楽しみだ」と語っています。
メンバーは技術や手法の最適化・拡大、食品プロトタイプの開発と試験に注力するほか、ソリューションがもたらす技術的・経済的・環境的影響のモデル化を行う計画です。
ノボ ノルディスク財団は、デンマークの食品分野においては産業界と研究者間の協力の伝統が根付いているといい、未来の食の基盤となる新技術を試す上で、デンマークは理想的な場所になると指摘。
「研究者、企業、シェフが緊密に連携しながらプロトタイプの開発を進め、その知見を世界中のコミュニティや産業の利益となるよう共有できる」としています。
参考記事：
Climate-resilient food innovation: International consortium aims to produce food prototypes derived from CO2 – Novo Nordisk Fonden
CO2 to Food – the creation of groundbreaking protein alternatives
International Consortium to transform CO₂ into food – University of Copenhagen
Bill Gates, Novo Nordisk Foundation Renew Project to Turn Carbon Into Food with $26M Investment
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