英国政府が培養肉の規制認可に関する初の安全性ガイドラインを発表

英国食品基準庁(FSA)とスコットランド食品基準庁(FSS)が連携して、国内初の培養食品向け安全性ガイドラインを発表しました。EU時代の新規食品(Novel Food)規制から脱却し、培養肉産業を推進するための新たな一歩を踏み出しています。
事業者に明確な指針を提供し、安全性評価の助けに
新たなガイドラインは、細胞性食品(動物細胞由来の培養食品)に焦点を当てたFSAとFSSのサンドボックスプログラムの一環として作成されました。2026年を通じて複数の安全性ガイドラインを発表予定で、うち2つが第一弾として公開されています。
第一の文書は分類に関するもので、動物細胞の培養によって作られた製品は「動物由来製品」に含まれると定義。培養肉が従来の食肉の法的な定義(=動物の食用部位)に該当するわけではありませんが、その生産工程においては既存の食品安全規制を適用しなければならないと規定しています。
ここではまた、培養肉スタートアップがHACCPに基づき重要管理点を設定・遵守する方法についても概説。HACCPは製造工程における全リスクの特定・軽減を義務付ける法的要件であり、最終製品が人体にとって摂取しても安全であると保証する衛生管理システムです。
第二の文書は、承認プロセスにおけるアレルゲン性および栄養価の評価方法に関する指針を示したもの。栄養面については、「新規食品は、代替する可能性のある食品と比較して栄養面で劣っていないことを申請書で示すべき」と規定。
また、「培養タンパク質は多様かつ広範な層に消費されると予想でき、個人がこれまで経験したことのないアレルゲンへの曝露を含む可能性がある」とし、「従って、アレルゲン性リスクを理解し消費者の安全を確保するには、慎重な評価が必要だ」と記載しています。
FSAの副局長を務めるThomas Vincentは、「新たなガイドラインは事業者に明確な指針を提供し、自社製品の安全性を規制当局に正しく説明する上での手助けとなる」とコメント。「具体的には、企業が販売認可を得る前に潜在的なアレルゲンリスクを評価し、栄養面で適切であることを保証するためのものだ」と述べました。
認可プロセスを効率化するサンドボックス制度
FSAとFSSのサンドボックスプログラムは、英国政府の科学・イノベーション・技術省(DSIT)が「Engineering Biology Sandbox Fund」を通じて160万ポンド(約3億3,200万円)を拠出したことを受けて、昨年開始されました。
欧州初とされるこの制度は、培養タンパク質の認可プロセス加速を目的としており、規制当局の培養肉に関する科学的知見の向上、詳細なガイドラインの策定、企業への申請前相談の機会提供を通じて、認可プロセスの効率化を図っています。
現在のところ、英国企業のHoxton FarmsとRoslin Technologiesに加え、PARIMA(フランス)、Mosa Meat(オランダ)、BlueNalu(米国)、Vow(オーストラリア)の合計6社* がサンドボックスに参加。
英国ではまだヒトの食品としての培養肉は認可されていませんが、ペットフード用途では世界に先駆けて製品化が実現しています。
Vincentは、「消費者にとっても、こうした革新的な新規食品が、従来の食品と同様の厳格な安全基準を満たしているとの確信が持てるだろう。サンドボックスプログラムにより、安全基準を損なうことなく、新興フードテックの障壁をなくす規制知識の迅速な蓄積が可能になった」と語っています。
* サンドボックス創設当初の参画企業は8社。Uncommon Bioが培養肉事業の売却により外れ、GourmeyとVital Meatが新会社PARIMAに統合されたため、現在は6社となっている。
参考記事:
FSA and FSS publishes safety guidance on lab-grown meat | News | The Grocer
UK Publishes Its First Safety Guidance for Cultivated Products
UK Government Publishes First Safety Guidance for Cultivated Meat Approvals
FSA and FSS issue first safety guidance for lab-grown meat market


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