オランダのMosa Meatが約27.6億円を調達、培養牛肉の生産コストは開発当初の10万分の1に

培養肉のパイオニア企業として業界を牽引するオランダのMosa Meatが、規制対応の進展と市場参入を加速させる1,500万ユーロ(約27億6,000万円)の資金調達に成功したと発表しました。同時に、生産コストの大幅な削減を報告しています。

2028年までの運転資金を確保


Mosa Meatは昨年4月に調達した4,000万ユーロ(約73億7,000万円)に続き、今年はクラウドファンディングで募集枠を上回る370万ユーロ(約6億8,100万円)を獲得。このたび、複数の既存投資家から追加調達を行い、累計調達額は1億5,600万ドル(約244億円)を超えました。

今回の出資者には、オランダ政府の投資機関Invest-NL、リンブルフ州の地域開発機関LIOF、代替プロテインへの関与を深めるドイツの養鶏大手PHW Group、そしてフードデリバリーJust Eat Takeaway.comの創業者兼CEO、Jitse Groenが含まれます。

Mosa MeatのCBO(最高業務責任者)を務めるTim van de Rijdtによると、この資金により同社のランウェイ(キャッシュ不足に陥らず事業の継続が可能な期間)は2028年まで延長されたとのこと。規制当局の認可取得を進め、市場参入の準備に充てる予定です。

Invest-NLの投資責任者を務めるVictor Meijerは、「培養肉は畜産の悪影響を軽減するために必要なタンパク質の転換における重要な要素だ」とコメント。「あらゆる新興分野と同様、培養肉への投資は困難を伴い忍耐力が求められるが、Mosa Meatは強固な基盤を築き、商業化に向けて明確な歩みを進めている」と評価しています。

生産コストは当初の10万分の1に


Mosa Meatは培養肉分野における先駆的企業の一つ。共同創業者でCSO(最高科学責任者)のMark Postは、2013年にロンドンで開催された記者会見で世界初の培養牛肉を披露した人物です。

2013年当時、2枚のバーガーパティの生産コストは33万ドル(約5,150万円)に上っていましたが、その後の培地の改良やバイオプロセスの最適化により劇的なコスト削減に成功しました。

現在の正確なコストは明かされていませんが、最大1,000リットル規模のバイオリアクターを用いて「レストランメニューに相応しい価格帯でハンバーガーを生産」しているとのこと。1個あたりのコストが10万分の1に削減できており、市場化が実現する頃にはさらに低減される見込みといいます。

培養肉の開発において同社は、ハイブリッドのアプローチを採用。タンパク質ではなく、肉の味や食感の基盤となる脂肪を培養し、これを植物由来の原料と混合して代替肉を作っています。

英国をはじめ複数の認可取得に期待


市場化に向けて、Mosa Meatはこれまでにシンガポール、欧州連合(EU)、スイス、英国の規制当局へ認可申請を実施済み。英国では政府が推し進める培養肉のサンドボックス制度にも参画し、ほかのスタートアップ企業や研究者、規制当局と一緒になって基準設計に取り組んでいます。

van de Rijdtは、今月初めて培養食品向けの安全性ガイドラインが出された英国で最初の認可を得られると予想しており、初期の生産量とコスト水準に最適な外食市場をターゲットに見据えています。

培養肉業界にとってはここ数年厳しい調達環境が続いており、同じオランダのMeatableは先週清算手続きに入ることが決定したばかり。米国で販売が可能な状態にまでこぎ着けていたBeliever Meatsも今月事業停止に陥るなど、苦戦する企業が出現しています。

このような状況下で、Mosa Meatが新たな資金の確保に成功したのは明るいニュースとなりました。創業者のPostは、業界で現在進行中の淘汰は「近年のスタートアップ企業の急増を考慮すれば、成熟過程における自然な段階だ」とみています。

参考記事:
Mosa Meat raises $17.6m; prioritizes ‘fundamentals over speed’
Mosa Meat Raises $17.6M, Slashes Production Costs Ahead of Cultivated Beef Launch
Mosa Meat secures fresh funding and slashes costs as commercial launch moves closer | PPTI News

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