精米時の副産物を活用して高タンパクの植物性チーズを開発 —米・アーカンソー大学

米国・アーカンソー大学の食品科学者チームが、米を精米する際に出る副産物から抽出したタンパク質を用いて植物性代替チーズを製造できることを実証しました。米の生産者や加工業者にとって、新たな市場を開拓する可能性を秘めています。

約12%のタンパク質を含む代替チーズが実現


アーカンソー大学の食品科学助教授を務めるMahfuzur Rahmanが主導し、学術誌『Future Foods』に掲載された本研究では、同一品種の玄米米ぬか砕米から抽出したタンパク質を分析。各タンパク質を植物性チーズの配合に組み込んだ場合の、組成と機能特性を調べました。

米タンパク質はアルブミン、グロブリン、グルテリン、プロラミンの4つの主要な成分で構成されています。研究チームは、これらタンパク質の分布が米粒の部位(玄米、白米、米ぬか)によって異なり、食品用途における機能特性に影響を与えることを発見しました。

米ぬかにはアルブミンが最も多く存在し、一方、グルテリンは玄米と砕米に多く含まれていました。こうしたタンパク質ごとの違いが、試作チーズの配合に用いた際の性質の違いに反映されることとなります。

チームは米の各部位からタンパク質を抽出し、ココナッツオイルとコーンスターチを使った標準的な配合で、3種類の植物性チーズを試作。これらの試作品のタンパク質含有量は約12%と、タンパク質を全く含まない場合も多い植物性チーズと比べて高い値を示しています。

Rahmanは、タンパク質含有量の増加は、代替チーズの開発における重要な課題であると指摘。多くの植物性チーズは、乳製品の食感を再現するため主にデンプンと脂肪に依存しており、その結果、栄養価が限られた製品となっています。

優れた溶解性や乳化作用で、多様な食品への応用に期待


本研究では、それぞれのタンパク源がチーズの食感と特性にどのような影響を与えるかについても検証を行いました。

砕米から抽出したタンパク質は、より柔らかい食感と優れた溶解性を持ち、油分の分離も促進するチーズを生み出しました。こういった特性は、グルテリン含有量の高さと関連したものです。

一方、玄米のタンパク質は必須アミノ酸含有量が最も高く、模擬消化試験において多くの遊離アミノ酸を放出しました。また、高い溶解性と乳化安定性が見られ、食品加工用途における潜在的な利点が示されています。

米ぬかのタンパク質は溶解性は低いものの、表面の疎水性が著しく高かったとのこと。高い保水性と起泡性により、チーズの食感を改善し、油分の分離も抑制できました。

これらの結果を総合すると、さまざまな米タンパク質を工夫して組み合わせることで、多様な機能特性を持つ植物性チーズ製品を開発できる可能性が示唆されています。

Rahmanによると、いずれのタンパク質も乳化・起泡作用を持つため、チーズ製造にとどまらず食品システムにおいて幅広い用途で活用が期待できるといい、「食品化学において卵や油が担う機能を代替する可能性もある」としています。

副産物の活用で、循環型経済の実現に資する


従来の精米工程では、脱穀により稲の穂先から外皮を取り除いて玄米とし、その後、白米へと加工する工程で米ぬかや砕米が副産物として発生します。

これらは動物飼料、ペットフード、醸造などの産業に使われているものの、研究チームはより高付加価値の食品原料へとアップグレードできると考えました。精米副産物を有効活用すれば、米産業における循環型経済(サーキュラーエコノミー)実現に向けた取り組みへの貢献も期待できます。

アーカンソー州は米の生産が米国で最も盛んで、2024年には過去最高となる143万エーカー(約5,800平方キロメートル)の土地で収穫がなされ、国内生産量のほぼ半分を占めていました。

米国農務省(USDA)によると、米の加工工程からは毎年、推定1,430万トンの米ぬかと2,480万トンの砕米が発生するとのこと。本研究では、こうした副産物を原料に年間約330万トンのタンパク質を生産できると予測しており、成長を続ける植物性タンパク質市場における大きな供給源となる可能性を秘めています。

また、米国の食品産業で使われる米タンパク質の多くは、輸入に頼っているのが現状。国内で精米した際の副産物からタンパク質を抽出することで、資源効率を高めながら自国産業を拡大できるとRahmanは示唆しています。

今後に向けては、米を原料としたチーズ製品の配合改良と、官能特性、保存安定性、消費者受容度の評価に重点が置かれる予定。実験室での開発段階から実用化への移行を促進するための研究が進められています。

Rahmanは並行して、米タンパク質の栄養価を向上させ得る新たな抽出技術の研究も実施。検討中のアプローチの一つは、ヘキサンなどの化学溶媒を使用しない超音波抽出法です。抽出技術の向上によって米タンパク質の機能性と栄養価がさらに高まり、次世代の植物由来原料としての可能性が強化されると見込んでいます。

参考記事:
University of Arkansas researchers turn rice milling byproducts into high-protein plant-based cheese | PPTI News
Arkansas study points to potential of rice-based cheese alternatives | The Plant Base
Rice-Milling Byproducts Could Transform Dairy-Free Cheese

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