単一のノズルから複数素材を同時にプリント、厚みのある培養ステーキの生産へ —スタンフォード大学研究

米国・スタンフォード大学の研究グループが、1本のノズルから複数種のバイオインクを同時に押し出すバイオプリンティング技術の開発を進めています。

工学部助教授のNatalie Larsonが、『Stanford Report』に掲載されたインタビューで研究内容について詳しく語りました。

生体材料の3Dプリントを緻密に制御


この培養肉プロジェクトには、スタンフォード大学の持続可能性を学ぶ学部Stanford Doerr School of Sustainabilityに設置されているアクセラレーター(Stanford Sustainability Accelerator)を通じて資金が提供されています。

Larsonの技術は、複数の材料を別々の層として積み重ねるのではなく、単一の大きなノズルから筋肉バイオインク、脂肪バイオインク、犠牲インクを同時に押し出して3Dバイオプリンティングを行うもの。犠牲インクは造形後に除去され、培養している間、厚みのある組織に栄養分を行き渡らせるための開いたチャネルを残す役割を果たします。

これまでは、分厚い肉の中心にある細胞を生きた状態に保つことが、細胞農業における最も大きな技術的課題の一つとなっていました。

その解決を目指すLarsonは以前、ハーバード大学在籍時にこの「サブボクセル制御*」と呼ばれる技術の基盤となる3Dプリントのプラットフォームを開発し、2023年に『Nature』誌で成果を発表。

現在のスタンフォード大学の研究室では、構造用バッテリー複合材、ソフトロボティクス、さらには防衛用途向けのメタマテリアル(人工物質)やアンテナなどに同じ技術を応用しています。

このシングルノズル方式を食肉にも応用することで、培養肉のプロトタイプとして主流であるひき肉状のものとは異なり、ステーキのような分厚い筋肉の塊と同じ外的・内的構造を持った肉の生産を目指しています。

* 「ボクセル」とは、3次元データの最小単位(2次元でいうピクセル)のこと。サブボクセルとは、1ボクセルに満たない細かな精度で処理する技術を指す。

自動化によるコスト削減も視野に


本プロジェクトはスタンフォード大学の4つの研究グループにまたがって進められており、残る3つの研究室は、非遺伝子組み換えウシ細胞株の開発や、バイオマテリアル(生体材料)の作製と特性評価、得られた組織の官能特性評価をそれぞれ担当しています。

Larsonは、環境面の問題を説明するにあたり、国連食糧農業機関(FAO)が広く引用している、従来の食肉生産が世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占めているという推定値と、それに伴う土地、水、飼料の必要量を挙げました。

ただし、従来の食肉を置き換え得る培養肉の生産には、「持続可能な材料源の不足、スケーラビリティの欠如、消費者への訴求力の低さといったいくつかの問題がある」と指摘し、それらの解決を掲げています。

Larsonの研究室では、取り組みのもう一つの柱として、複合素材プリンティングの自動化を目的とした4Dイメージングやコンピュータビジョンに関する研究を進めている最中です。

将来的に食品業界で求められる大量生産を行うプロセスでは、低コスト化が鍵になるため、長時間を要する調整工程や造形不良に伴う廃棄の削減が目標とのこと。

「高度なプリンターと自動化技術を駆使して、現時点では夢物語でしかないような、機能性を持つ素材や『生きた』素材の創出を可能にしたい」と語っています。

参考記事:
Multimaterial 3D printing opens new frontiers | Stanford Report
Stanford Prints Muscle, Fat and Nutrient Channels Through One Nozzle to Build Cultivated Steaks
Stanford’s Natalie Larson targets whole-cut cultivated meat with subvoxel 3D bioprinting | PPTI News

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