ベルギーのPaleoが約3.6億円を調達、精密発酵ミオグロビンの生産コストを600分の1未満に

ベルギーの精密発酵スタートアップPaleoが、酵母由来のミオグロビンに関する規制当局への申請を進めるため、Beyond Impactの主導により200万ユーロ(約3億6,200万円)の資金を調達しました。
肉特有の色やうま味を生み出すヘムタンパク質
植物由来の原料を用いて作られる代替肉は、依然として味が劣るという指摘に直面しており、社会全体に広く普及させる上ではこのギャップの解消が不可欠。
Paleoが取り組んでいるのは、肉特有の色やうま味の源となる鉄分豊富なヘムタンパク質の一種、ミオグロビンを生成するよう酵母を改変するものであり、上述したような課題を解決すると期待されている技術の一つです。
精密発酵と呼ばれるこの技術では、食品業界で広く利用されている酵母の一種、Komagataella phaffii(別名、ピキア酵母)にミオグロビンをコードするDNA配列を組み込み、制御された条件下で酵母を増殖させると同時にミオグロビンの発現を誘導。最終的に得られるのは、動物由来のものと生物学的に同一のタンパク質です。
遺伝子組み換え酵母は発酵後の工程で分離・除去するため、ミオグロビンはGMOフリーの食品原料として、代替肉・シーフード製品などに使用できます。
ピキア酵母は、植物性代替肉大手のImpossible Foodsが同じく精密発酵によって大豆由来のヘモグロビンを生産する際にも使われている菌株です。
米国での認可申請と提携拡大を目指す
Paleoが生産するミオグロビンは多岐にわたり、牛肉、鶏肉、豚肉、羊肉、マグロに含まれるタンパク質と同じ構造を持つもの(ヒトの食品用)のほか、マウス、ラット、ウサギ由来のバージョン(ペットフード用)も提供可能。
同社は自社で生産設備を構築するのではなく、複数の受託製造業者と連携しています。すでに1万リットルを大きく超える規模で技術を実証し、過去2年間で生産コストを613分の1にまで削減することに成功しました。
共同創業者でCEOのHermes Sanctorumによると、今回の資金調達は研究開発や生産規模の拡大が主目的ではなく、それらの段階は概ね通過しているとのこと。
現在の最優先事項としては、米国における規制当局への申請手続きの完了、そして試験や配合の開発を通じた顧客との連携加速を挙げています。
植物性代替肉普及の起爆剤に
昨年は、規制当局による審査プロセスの長期化や資金流入の減少が目立ち、代替プロテイン分野にとっては引き続き苦難の年となりました。Paleoも例外ではなく、研究開発を強化するべく事業の「戦略的再編」を行うとし、ベルギー国内に構えるR&Dセンターで大幅な人員削減を断行しています。
Sanctorumは、「この分野は明らかに厳しい状況に置かれているが、消費者が従来の肉の代替品に対する関心を失ったわけではないと考えている。根本的な問題は、多くの製品がいまだに高価格であるにもかかわらず、十分に納得のいく食体験を提供できていないことだ」と指摘。
「だからこそ、ミオグロビンが貢献できる余地がある。ごく少量を添加するだけでも、より本物の肉に近い製品をコスト効率良く生み出せる当社のミオグロビンは、このカテゴリーにおけるゲームチェンジャーとして、メーカーが消費者を再び引きつける製品を開発する助けになると確信している」と述べています。
Paleoは同時に、ペットフードや栄養機能食品など、代替肉以外の用途も模索しており、これらの分野でもミオグロビンが持つ独自の栄養的・機能的特性が新たな機会を創出する可能性があるものとみています。
今回の投資により、同社の累計調達額は1,800万ユーロ(約32億6,000万円)近くに達しました。欧州では、今年上半期の代替プロテイン企業の資金調達のうち84%を、バイオマス発酵および精密発酵のスタートアップが占めていました。それぞれのセグメントにおける2025年通年の合計額をすでに上回る勢いで、発酵技術に対する投資家の関心の高さがうかがえます。
参考記事:
Hermes Sanctorum | LinkedIn
Paleo raises €2 million in funding to progress precision-fermented myoglobin solutions | FoodBev Media
Paleo Bags $2.3M to Advance Regulatory Filings for Animal-Free Meat Protein
Paleo secures fresh funding after cutting myoglobin production costs 613-fold | PPTI News


この記事へのコメントはありません。