米Pow.BioがAIを活用した連続発酵生産施設をオープン、業界企業の生産コスト低減を支援

精密発酵を手掛ける米国企業Pow.Bioが、カリフォルニア州アラメダに25,000平方フィート(約2,300平方メートル)の新施設を開設したと発表しました。
AI制御の連続発酵プロセスを構築
この新工場は連続発酵設備を備え、さまざまなバイオベース製品を生産できるとうたうPow.Bioの発酵プラットフォームの、スケーラブルな展開を示すモデルと位置付けられています。
従来行われてきたバッチ式の精密発酵プロセスでは、微生物を発酵タンク内で臨界量に達するまで増殖させた後、培地の交換をトリガーに標的分子の生産を開始するよう促進。バッチが完了して成分の抽出が終わると、タンクを洗浄し、再び微生物の増殖からスタートしますが、この繰り返しは言うまでもなく時間がかかっていました。
Pow.Bioは、微生物を数週間にわたり「超生産的な」状態に維持する方法を発見し、生産能力を大きく高めることに成功。
成長を促進する小型のバイオリアクターと、生産に専念する大型のバイオリアクターを結びつけ、第一段階では突然変異を誘発しにくい環境を、第二段階ではコンタミネーションを防ぐ環境を作り出したといいます。
独自の人工知能(AI)を搭載したソフトを用いて数週間以内のプロセス開発が行え、予測制御により自律的な発酵、ばらつきの低減、生産効率の向上が見込めます。
新施設は、食品・飲料業界に供給する顧客向けに、発酵生産と下流工程(スプレードライ、フリーズドライなど)を行えるクリーンルームを備え、米国食品医薬品局(FDA)への登録も完了させました。
資本支出を抑え、最小限の修正で統合可能
Pow.Bioによると、この技術は世界中の既存施設に組み込むことができ、パートナー企業のラボスケールから数百kgのパイロットスケールへの移行を可能にし、生産コスト削減を強力に後押しするとのこと。
また、将来的にほかの場所で商業生産に移行したいと考えた場合にも、他社で持っている設備に最小限の修正で統合できるといいます。
共同創業者でCEOを務めるShannon Hallは、「今日、多くの有望なバイオ製品は、生産コストの高さと、収益創出を遅らせる開発期間の長期化という問題を抱えている」と指摘。「当社の新しい施設は、パートナーにとっての価値を生み出すコスト効率に優れた生産ソリューションを実証するものだ」とコメントしています。
Pow.Bioは2023年、大規模な発酵生産という課題に取り組むことを目指し、シリーズAラウンドで950万ドル(約14億1,000万円)の資金を調達。当時、自動化された連続発酵プラットフォームにより、わずかな資本支出で従来比5倍の生産性を実現できると主張していました。
昨年には、植物性ハチミツを開発・製造するスタートアップ企業のMeliBioと提携。精密発酵の技術を用いたハチミツと酵素の生産を拡大させています。
参考記事:
Pow.Bio Opens New Facility With AI-Enabled Continuous Fermentation Capabilities
Pow.Bio unveils new continuous fermentation demo facility in Alameda, CA
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