Eniferがエタノール大手のFSと提携、ブラジルで蒸留残渣を有効活用したマイコプロテイン生産を目指す

マイコプロテイン原料「PEKILO」の開発・生産を手掛けるフィンランドのEniferが、ブラジルの大手エタノール生産会社FSとの提携により、独自の発酵技術をラテンアメリカ諸国に導入する計画を発表しました。

Eniferの発酵技術とFSのエタノール生産を統合


この提携により、Eniferのペットフード業界と水産養殖業界をターゲットにしたマイコプロテイン原料(「PEKILO Pet」および「PEKILO Aqua」)の生産プロセスが、欧州以外に初めて導入される見込み。

Enifer独自の発酵プロセスをFSの既存のエタノール生産ラインに統合し、ブラジルをはじめ、エクアドルやチリなどのラテンアメリカ諸国でマイコプロテインを販売する計画です。

FSは、ブラジル連邦政府の科学技術イノベーション通信省(MCTI)が管轄する研究融資機関FINEPから980万レアル(約2億5,500万円)の資金提供を受けて、本プロジェクトを進める予定。

両社は共同で年間500トン規模のパイロットスケールでの施設構築に取り組んでおり、これが成功して大規模な工業プラントに移行すれば、最大で年間10,000トンのマイコプロテインを生産できるようになる可能性もあるとしています。

エタノール生産の副産物を有効活用する初の事例に


両社はまた、FSがトウモロコシからエタノールを生産する際の副産物をタンパク質生産の原料として有効活用する初の事例を作り、資源効率の向上と循環型経済の推進を図る計画。

トウモロコシ由来のエタノールを蒸留した後に残る副産物は、薄い蒸留残渣液(液体部分)と湿潤蒸留粕(固体部分)に分離されます。

通常、蒸留粕の方は乾燥させて乾燥蒸留粕(DDG)とし、蒸留残渣液の方は一部を再利用して発酵プロセスに戻すか、蒸発させて得たコーンシロップ濃縮物をDDGに添加して、一般に「トウモロコシ蒸留粕」と呼ばれるDDGSを作り、飼料原料として使用されます。

EniferのCEOを務めるSimo Elliläは、DDGSを製造する過程でDDGのタンパク質含有量が薄められてしまうといい、「このプロセスは本質的に、グリセロールなど栄養的に価値のない化合物を多く含む蒸留残渣液を処理する手段に過ぎない」と指摘。

対して、同社のプロセスでは、問題のグリセロールを高濃度のタンパク質に変換することで、蒸留残渣液に付加価値をつける新たな手法を提供します。

同社はこれまで、菌類に与える栄養分として、砂糖精製の副産物である糖蜜や乳タンパク質製造の副産物である乳糖パーミエイトなど、約100種類の異なる原料をテストしてきました。

蒸留残渣液は、その中でも極めて栄養価が高いため、リンやカリウムなどの追加栄養素をほとんど必要としないというメリットがあるとのこと。一方で、固形分やコーン油の処理といった、取り扱いの面で解決すべき問題もあるといいます。

認可申請と大型工場建設が進行中


独自の菌株を用いたバイオマス発酵により生産される「PEKILO」は、タンパク質とβ-グルカン(食物繊維の一種)を豊富に含む一方、脂肪と炭水化物が少なく、消化の良い完全タンパク質の供給源として最適。

当初はペットフードと水産養殖を主なターゲットとしていますが、将来的には代替肉や乳製品、スナックバーまで、ヒトの食品への応用も計画されています。

今年発表されたライフサイクルアセスメントによると、「PEKILO Pet」は多くのペットフード原料に比べてカーボンフットプリントが大幅に低く、濃縮大豆タンパク質、ラム肉、昆虫タンパク質粉末に比べて優れた性能を示しました。

Eniferは現在、欧州で新規食品としての認可を申請中で、米国でもGRASステータス取得の手続きを進めています。昨年調達した資金をもとに初の大型工場も建設しており、年末までの竣工を予定。フル稼働すると年間最大3,000トンのマイコプロテイン生産が可能になる見込みです。

参考記事:
Enifer partners with ethanol giant FS for mycoprotein production in Brazil
Enifer and FS bring PEKILO mycoprotein production to Brazil using corn ethanol side streams | PPTI News

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