食品廃棄物を発酵させて天然香味料を生み出すフランスのFungu’itが、約6.7億円の調達を実施

フランスのバイオマス発酵企業Fungu’itが、食品廃棄物を天然香味料に変換する技術を拡大するため、シードラウンドで400万ユーロ(約6億7,300万円)の資金調達を行ったと発表しました。
数カ月以内に大規模な製品発売を予定
このラウンドはAsterion Venturesがリードインベスターを務め、Evolem、UI Investissement、フランスの公的投資銀行Bpifranceが参加。
Fungu’itはこれにより、年間数十トンを生産できる産業規模のプラントの建設、生産プロセスの特許取得、数百種類の微生物株と食品廃棄物の組み合わせをテストしたデータベースの構築を進めます。
同社は特に、肉とカカオの代替品に用いる香味料の開発に重点を置いており、消費者が植物性代替肉の味に満足していないこと、カカオの価格変動が激しくなっていることを背景に、最初の製品の商業化を加速する計画。
CEOのAnas Erridaouiによると、現時点で運営しているパイロットプラントは、試作品開発、顧客テスト、初期の商業化に十分な量の生産が可能。目下、香味料などの原料メーカーと活発な協議を進めており、生産拡大に伴い、数カ月以内に大規模な製品発売を予定しているとのことです。
また、コスト効率に優れた生産プロセスが強みといい、「伝統的な発酵と比べてエネルギーと水の使用量を大幅に削減でき、酵母エキスなどの従来の香味料の原料と比べても、既に競争力のあるコストを達成できている」と述べています。
超加工食品への反発に揺れるフレーバー業界
食品業界では、人工香味料を天然由来の香味料に置き換える努力が重ねられてきました。しかしながら、酵母エキスやローズマリーエキスなどの一見無害な原料でも高度な加工を経ており「クリーンラベル」と呼ぶのは難しい状況だといい、ほとんどの天然香味料は、化学組成において合成香味料とほとんど違いがないと示した研究もあります。
CEOのErridaouiは、「現在の多くの代替肉製品は、味に深みや本物らしさを欠いている。大豆、エンドウ豆、ソラマメといった植物性タンパク質は、オフフレーバーが生じたり、やや味気なくなったりし、調理中に本物の味を醸し出す自然な成分(脂肪やアミノ酸)が不足している」と説明。
「多くのブランドは酵母エキスや人工添加物でこの問題を解決しようとしているが、その結果多くの加工に頼ることとなり、消費者に対する説得力に欠ける」と指摘しています。
Fungu’itは、小麦ふすま、ビール粕、油粕など食品産業から出る副産物をアップサイクルして、湿った固体表面で生育する菌類の餌に活用。菌類が基質を代謝する過程で、複雑な風味分子を生成します。
固体発酵が完了し、発酵した材料を乾燥・粉砕して粉末状にすると、強い風味特性を有する原料が得られ、菌株や基質、発酵条件を変えることで、うま味やロースト、カカオのような風味までも生み出せるといいます。
同社は現在のところ、特にアジア地域の食品製造において安全に使用されてきた長い歴史があり、大規模な応用でも信頼性の高い菌株を開拓。発酵のさまざまな条件の組み合わせと、その結果得られる風味特性をまとめた独自のデータベースを構築しており、将来の予測、選択、最適化に生かす狙いです。
参考記事:
This Startup Got $4.6M To Turn Food Waste & Fungi Into Plant-Based Meat Flavourings
French FoodTech startup Fungu’it raises €4 million to reinvent natural flavorings through fungi fermentation | EU-Startups
Fungu’it raises €4M to transform agricultural by-products into natural flavourings – Tech.eu
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