オランダのMeatable、治療薬事業への転換を決めたUncommon Bioの培養肉プラットフォームを取得

オランダに本社を置く培養肉企業のMeatableが、英国の同業他社Uncommon Bioの培養肉プラットフォームを買収したと発表しました。
細胞リプログラミングと分化技術を統合
この買収には、Uncommon Bioの主要技術、知的財産、高性能細胞株、そして専門職の人材が含まれます。
Meatableは、Uncommon Bioの遺伝子組み換えを伴わないメッセンジャーRNA(mRNA)リプログラミングと、低分子活性化RNA(saRNA)分化技術を統合。
これらを、Meatableの特許技術で幹細胞をあらゆるタイプの細胞に分化できるようプログラムする「OPTI-OX」と組み合わせると、市場投入までの時間を短縮し、世界中で規制認可を得て、消費者や地域の嗜好に合わせられるようになるとしています。
「OPTI-OX」テクノロジーは、人為的な転換が必要な不死化細胞株とは異なり、急速に増殖し続ける能力を自然に持っている多能性幹細胞を用いるもの。
灌流培養と組み合わせることで極めて高い細胞密度を生み出す連続生産を可能にし、わずか4日間で完全に分化した筋細胞と脂肪細胞を作り出すという、培養肉業界で最速の細胞分化プロセスを確立しています。
肺疾患をターゲットに治療薬事業へシフト
一方のUncommon Bioは、独自技術を基に医療の変革に注力するべく、ステルスモードで治療薬事業をスピンアウトさせました。
「多糖類ベースのデリバリープラットフォームは複数経路の細胞リプログラミングを可能にし、マルチターゲット療法に代わる安全で効率的、かつスケーラブルな選択肢になる」といい、まずは特発性肺線維症(IPF)のような重篤な肺疾患をターゲットに据えるとのこと。
CEOを務めるBenjamina Bollagは、「治療薬に焦点を絞ると決めて以来、当社で築き上げてきた革新的な技術の最適な行き場を見つけたいと考えていた。Meatableが私たちの研究を前進させ、大規模に応用するのを見るのが楽しみだ」と語っています。
2017年創業の同社は、ChatGPTで知られるOpenAIのCEOサム・アルトマンなど投資家の関心を引き、2023年のシリーズAラウンドでは3,000万ドル(約44億1,000万円)の資金を調達。
今年、英国食品基準庁(FSA)が実施する、細胞性食品の安全性評価に焦点を当てた2年間のプログラムに参加する8社のうちに選ばれていました。
鶏肉・羊肉などへ製品の幅を広げる
Meatableはすでに牛肉と豚肉の培養製品の開発を成功させていますが、新たな技術の統合により鶏肉や羊肉などの製品開発が加速し、幅広い品種、市場、消費者層へと急速に拡大する態勢に入りました。
特にUncommon Bioの非遺伝子組み換えというステータスに加え、規制当局への申請書類に必要なデータを得たことで、いくつかの地域では迅速な認可取得が可能になるとみられています。
同社は、従来の畜産業に取って代わるのではなく、それを補完する目的で、サプライチェーン全体でパートナーシップを構築する取り組みを実施。昨年にはタイの食肉大手Betagroから投資を受け、食肉業界のベテランを複数名チームに招き入れました。
新たにCEOとして加わったJeff Tripicianは、「この買収は単なる戦略的なステップにとどまらない、培養肉生産の新たな基準を打ち立てるものだ。補完性の高い2つのプラットフォームを組み合わせ、高品質な培養肉を世界規模で確実に提供できる体制を整えられた」とコメント。
「これにより、豚肉、牛肉、羊肉、鶏肉などの安定供給で食肉業界をサポートし、不確実性が高まる時代において事業の継続性とレジリエンスを確保することができる」と述べています。
参考記事:
From the Table to the Clinic: Uncommon’s Next Chapter in Human Health | by Benjamina Bollag | Aug, 2025 | Medium
Meatable acquires Uncommon Bio’s cultivated meat platform
Meatable acquires Uncommon Bio’s cultivated meat platform as latter pivots to therapeutics
Meatable Acquires Cultivated Meat Platform from Uncommon Bio, Which Turns to Therapeutics
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