Aleph Farmsが初の技術経済性分析の結果を公表、培養牛肉の収益性を示す

イスラエルの培養肉企業Aleph Farmsが、第三者による技術経済性分析(TEA)を実施し、その結果を公表

同社の培養牛ステーキが今日利用可能な技術を用いて短期的に収益性を達成できることを確認し、培養肉の商業化に向けた新たなマイルストーンに到達したと述べました。

既存の技術や設備を想定した評価を実施


本調査は、BühlerとZETAが共同で設立したバイオプロセス工学企業のERIDIAが実施し、Aleph Farmsのホールカット培養牛肉「Aleph Cuts」を対象にしたものです。

分析によると、同社の培養牛ステーキは、1ポンド6.45ドル(キロ単価約2,110円)で生産でき、同12.25ドル(同4,010円)の卸売価格で販売される見込み。

47%の売上高総利益率(粗利率)で投資回収期間はわずか2.5年と見積もられており、大規模な培養肉生産が経済的に実現可能であることが示されました。

Aleph Farmsは、「これは理論上の話でも学術研究でもなく、現実世界の技術に基づいた産業グレードの研究だ」と述べています。

培養肉を手掛けるその他多くのスタートアップ企業とは異なり、同社は遺伝子組み換えや不死化の処理を行っていない細胞の使用を選択しました。ERIDIAの調査は、バイオプロセス産業ですでに導入されている市販の設備とプロセスを用いることで、このアプローチでも採算が取れるとしています。

高級価格帯より下げても収益性を維持


TEAは、メガサイズの装置の利用を仮定するのではなく、5,000リットルのバイオリアクターを用いた現実的な規模での生産について評価を実施。地域ごとにモジュール式のシステムを組み上げるAleph Farmsの戦略を反映し、アジアと欧州の施設が評価対象とされました。

結果として、原材料の投入が原価の大部分を占めることが判明しましたが、同時にさらなる効率性改善の機会も明確になりました。感度分析によれば、継続的なプロセス最適化により、売上原価(COGS)は最終製品1ポンドあたり4.08ドル(キロ単価約1,340円)まで下げられる可能性があるとされています。

最大のポイントは、Aleph Farmsの培養牛肉が、十分な収益性を確保するためにプレミアム製品としてのポジショニングに依存する必要がないということ。

TEAでは、テンダーロインやリブロースといった高級牛肉をベンチマークとして、1kgあたり27ドル(約4,010円)の卸売価格を想定していましたが、これを同20ドル(約2,970円)としても事業としては魅力的であり、収益性が維持されると結論。

Aleph Farmsは、「プレミアム製品としての位置付けもできるかもしれないが、収益性にとって必要ではない」としています。

業界全体で培地コストの低下が鍵に


従来の食肉とのコスト競争力がしばしば懐疑の的となってきた培養肉セクターにおいて、透明性を持って収益性を示すケースは近年増加しています。

イスラエル企業SuperMeatの培養鶏肉は、現在10リットルの設備を25,000リットルのバイオリアクターへとスケールアップした場合、高級な放牧鶏と同等の1ポンドあたり11.79ドル(キロ単価約3,860円)で生産が可能と予測されました。

フランスのGourmeyが委託しアーサー・ディ・リトルが行ったTEAでは、培養細胞を約半分含むハイブリッド製品に対して分析を実施。こちらは5,000リットルのバイオリアクターを用いて、1ポンドあたり3.43ドル(キロ単価約1,120円)で生産できると結論されています。

いずれもコスト低下の鍵となっているのが、ウシ胎児血清(FBS)など高価な成長因子への依存から脱却し、アニマルフリーの培地を開発したこと。培地コストの課題をクリアして規模を拡大すれば、十分に収益化が見込める価格帯に到達できることが示唆されています。

参考記事:
Aleph Farms | LinkedIn
Aleph Farms achieves breakthrough as independent study confirms profitability of cultivated beef cuts | PPTI News

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