モンデリーズも支援するCelleste Bio、チョコレート業界向けに細胞培養ココアバターを発表

イスラエルのフードテック企業Celleste Bioが、植物細胞の培養技術を用いて開発されたチョコレートグレードのココアバターを発表しました。
ココアバターの脂肪酸組成や機能性を忠実に再現
チョコレート産業が気候変動による供給危機に直面する中、培養カカオ開発を手掛けるCelleste Bioが新たな技術開発を実現。ベルギーの首都ブリュッセルで先週開催された、欧州連合(EU)の機関EIT Food主催のイベント「Next Bite 2025」で披露しました。
キャドバリーやオレオといったブランドを展開するモンデリーズ・インターナショナルからも出資を受ける同社は、カカオ細胞をバイオリアクター内で懸濁培養してこの代替油脂を開発。
ビタミン、ミネラル、水、糖分、その他の主要成分と共に培養された細胞から作られた最終製品は、カカオ豆を加工して得られるものと全く同じ脂肪酸プロファイルを持った、純粋なココアバターです。
その他の成分は一切添加されておらず、CEOのMichal Beressi Golombは、「科学の力で自然を忠実に再現した原料を透明性をもって育成・生産できると証明できた」と強調。
細胞が増殖してバイオマスが形成されココアバターとココアパウダーを抽出できるようになるまでのプロセスは、自然界でカカオが育つ様子と非常に似ていますが、最適な条件に制御された環境下で培養が行われ、工程ごとに品質と一貫性が確認される点が異なります。
Berresi Golombはまた、「もう一つの重要な点として、バイオマスを回収した後も細胞は成長を続けるため、新たなカカオ豆を投入せずにプロセスが繰り返される。新しくカカオの実を手に入れたり、木を伐採したりする必要はない」と説明しています。
長期的な危機に先手を打つ技術
Celleste Bioによると、チョコレートメーカーは年間約160億ドル(約2兆4,100億円)をカカオ原料に費やしており、ココアバターだけでその支出のほぼ半分を占めるとのこと。
作物の収穫量と価格は一定水準で安定する場合もあるとはいえ、技術革新による解決策なしには、長期的に見て不安定となることは避けられません。
チョコレート大手のMars(マース)で重役を務めたHoward Yano Shapiroも、培養技術は「伝統的な農業に取って代わるものではない」としつつも、サプライチェーンの混乱に対する「保険」としての役割を果たすと述べています。
細胞ベースのココアバターは、農業上の制約を受けずに、安定的かつ持続可能な方法で大規模生産が行える点が魅力。
従来のココアバターの生産に4トンのカカオの実と1万平方メートルの土地を必要としていたところ、わずか1、2粒のカカオ豆から同量を得られるという効率性に加えて、すべての原料が効率的に利用され、生産工程で廃棄物が発生しない点も付加価値として強調されています。
Celleste Bioは現在、1,000リットルの能力を持つパイロット施設の最終調整段階にあり、2027年までの市場投入を目標に設定。米国、EU、英国、イスラエルで規制当局への認可申請手続きを進めている最中です。
参考記事:
Mondelēz-backed Celleste Bio debuts cell-cultured chocolate-grade cocoa butter
Mondelēz-backed startup reaches breakthrough for lab-grown chocolate | Food Dive
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