イスラエルのSuperMeatが約5.5億円を調達、欧州を優先市場に位置付け培養鶏肉の発売を狙う

培養肉の開発を手掛けるイスラエルのスタートアップ企業SuperMeatが、欧州における商業化の目標に向けて、新たな資金調達ラウンドで350万ドル(約5億4,900万円)を確保しました。

100%の培養鶏肉を低コストで生産


今回のラウンドは既存株主のAgronomicsが主導し、現金と新株発行を組み合わせた200万ドルを出資。Milk and Honey Venturesも再度の出資を行いました。これにより、SuperMeatの累計調達額は1,850万ドル(約29億円)に達しています。

AgronomicsのJim Mellon会長は、「SuperMeatが産業規模での培養肉実現に向けて進める取り組みは、魅力的な財務的機会であるだけでなく、よりクリーンでレジリエント、先進的な食の未来に向けた戦略的転換を代表する動きだ」とコメントしています。

SuperMeatは培養肉分野におけるパイオニア企業の一つで、10年前にIdo SavirShir FriedmanKoby Barakによって設立されました。

鶏の細胞をバイオリアクター内で培養して筋肉と脂肪を形成。細胞が所定の密度に達したところで、残っている培養液を除去して収穫する連続プロセスを構築しています。

通常、鶏を飼育して食肉へと加工するには42日を要しますが、このプロセスではスペースと資源を最小限に抑えながら、わずか2日間で鶏1羽分に相当する3ポンド(約1,360g)の肉を生産可能です。

欧州での市場化に向けて提携を進める


SuperMeatは、培養液に含まれる血清やアルブミンといった高価な動物由来成分をより安価な代替品で置き換えて、培養液のコストをリットル単価0.5ドル(約78円)未満に抑えています。

これにより、植物由来原料と配合したハイブリッド製品ではない100%の培養鶏肉製品(筋肉85%、脂肪15%)について、25,000リットル規模での生産コストを1ポンドあたり11.79ドル(キロ単価約4,080円)に抑えることに成功

技術的なブレイクスルーを複数達成して、米国における高級鶏肉の価格水準にまでコストを下げ、培養肉を身近なものにするための突破口を開きました。

「世界的なタンパク質需要が拡大し続ける中、工業型農業に伴う環境・健康への影響を低減しつつ、持続可能な方法でこの需要を満たすことが不可欠だ」とMellonは指摘。SuperMeatの生産技術は、CE Delftが行ったライフサイクルアセスメントの結果、従来の鶏肉に比べてCO₂排出量を半分近く削減できることも証明済みです。

同社は現在、週に数百ポンドの培養鶏肉を生産できる施設を稼働させており、産業規模の施設に拡大すれば、年間670万ポンド(約3,000トン)を得られる見込み。これは約270万羽の鶏に相当し、必要な土地は80%削減されます。

販売認可の取得に向けては米国、欧州、アジアの規制当局と連携し、長らく米国が最優先市場となっていましたが、今回の投資により欧州が商業計画の中心に位置付けられました。

細胞農業の業界団体Cellular Agriculture Europeには創設当時から参加しているほか、過去にはドイツの養鶏大手PHW Group、スイスの小売大手Migros(ミグロ)と提携を実施。今年初めにはバイオテクノロジー企業Stämmと協業して、2026年までに培養肉の市場投入を計画しています。

参考記事:
SuperMeat Raises $3.5M to Launch Cultivated Chicken in Europe
Agronomics commits another $2m to SuperMeat
Agronomics investment $2 million in cultivated chicken maker SuperMeat – NewsnReleases

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