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英国の規制当局が精密発酵食品に関する初の安全性ガイドラインを策定、次世代原料の普及に向けた支援に乗り出す

英国食品基準庁(FSA)スコットランド食品基準庁(FSS)が、精密発酵食品に関する国内初の安全性ガイドラインを公表し、バイオテクノロジーを駆使した次世代原料の急速な普及に備える重要な一歩を踏み出しました。

精密発酵により生産された食品および食品原料を、既存の食品安全基準の下でどのように評価すべきかを定めると同時に、企業がこれらの製品の安全性を消費者に示すために必要な科学的根拠についても概説しています。

既存の衛生法規の解釈を助ける目的


精密発酵とは、細菌や酵母などの微生物を制御された環境下で培養し、特定の分子を生産する特殊な微生物発酵法。タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミンといった特定の分子を個別に生産でき、それらを分離・精製して食品に配合します。

代謝産物の混合物を生成する従来の発酵プロセスとは異なり、精密発酵では高度なバイオテクノロジーを使用して微生物をプログラムし、特定の成分を高純度かつ均一に生産できます。発酵後に目当ての化合物のみを分離するため、最終製品中に生きた微生物は残りません。

FSAとFSSは、精密発酵を用いて作られた食品には、代替乳製品に使われる機能性タンパク質から、加工食品に配合される特殊な栄養素や脂肪まで、幅広い成分が含まれると定義。

新たに公表されたガイドラインに法的拘束力はありませんが、既存の衛生法規がこれらの製品にどう適用されるかの理解を助け、製造に関わる食品事業者の責任を明確化。安全性評価プロセスが技術の進歩に後れを取らないようにし、食品イノベーションにおける責任ある成長を支援することを目的としています。

両機関は、「堅牢で科学的根拠に基づいた枠組みを用いてガイドラインを策定した」とした上で、「企業が規制上求められるものをより早期に理解できるようにするとともに、新たな食品技術におけるイノベーションの支援を意図している」と述べました。

精密発酵製品の分類を定義


このガイドラインは、英国科学・イノベーション・技術省(DSIT)の資金提供を受けたFSAとFSSの研究プログラムを通じて作成されました。

その中心的な要素は、既存の食品衛生規則における精密発酵製品の分類です。規制当局の現在の解釈は、精密発酵によって作られた製品は、生産工程のいずれかの段階で動物由来の細胞や組織といった材料を使用している場合、動物由来製品に分類され得るというもの。

例えば、動物細胞から得られた遺伝物質を用いて微生物をプログラムした場合、発酵の結果得られた成分は、動物由来製品を規制する枠組みの対象となる可能性があります。

しかし、微生物の改変に使用する遺伝情報を公開されている遺伝子データベースからデジタル形式で取得し、また動物から抽出したものではなく合成したDNAを用いる場合、発酵で得られる成分は動物由来とはみなされません。

本ガイドラインでは、上記の分類は「規則(EC)853/2004」で定められている食品衛生規則にのみ適用され、食品法におけるその他の分野での製品の取り扱いを自動的に決定するものではないと強調しました。

規制当局はまた、ガイドラインはあくまで既存の法令に関する当局の現在の解釈を反映したものであり、新たな技術の出現に伴い変更となる可能性があると述べています。

専門家によるリスクアセスメントを実施


安全性ガイドラインと併せて、当局は精密発酵食品の生産技術と、そのプロセスに伴う潜在的なリスクを検証した専門家によるワークショップの調査結果も公表しました。

ワークショップには科学者と規制の専門家が集まり、認可申請者の多くが課題と感じているいくつかの分野に焦点を当てて議論。新規食品の安全性評価のための実践的なアプローチが特定されました。

専門家は、評価すべき最も重要なリスクは、発酵生産の方法によって異なると結論。微生物を遺伝子操作して発酵成分を精製する場合の安全性評価は、生産および精製後に潜在的に有害な残留物が残存するかどうかに焦点を当てるべきで、これにはアレルギー反応を引き起こす可能性のある微量成分や、微生物が産生する毒素、抗生物質耐性に関連する遺伝子などが含まれます。

対して、発酵させた微生物自体が食品として消費されるのを想定している場合は、微生物種を正しく特定し、その微生物が安全に消費できると証明することの重要性が強調されました。

全ゲノムのシーケンス解析は、微生物の同定と、潜在的なリスクを示す遺伝的特徴の検出において最も信頼性の高い方法として特定されましたが、専門家は計算解析だけでは不十分であると指摘しました。

バイオインフォマティクスツールは遺伝子データにおける潜在的な懸念事項を特定できますが、それらの特徴が最終製品に存在するかどうかを確認するには、実験室での試験が必要です。

透明性を高めて審査期間の短縮を目指す


ワークショップで議題に上がったもう一つの重要な項目は、消化性とアレルゲン性の評価。乳製品、卵、肉の代替品など、精密発酵原料が食事からのタンパク質摂取量に大きく貢献することを目的とする場合、ラボでの消化試験が特に重要であるという点で意見が一致しました。

また、加工方法がアレルゲン性とタンパク質の安定性にどのように影響するかについても検討を実施。消化過程で分解されずに残るタンパク質はアレルギーリスクが高い一方、速やかに分解されるタンパク質は一般的に問題が少ないと考えられています。

主要な乳タンパク質であるβ-ラクトグロブリンの精密発酵版に関するケーススタディは、規制当局が評価プロセスにおいてアレルギー誘発性、栄養価、安全性データを総合的に勘案する手法を示す実践的な例となりました。

専門家は、分子生物学的・遺伝学的な解析に加えて、生産管理の妥当性を検証する重要性を強調。微生物の培養物が加工中に効果的に不活化されていることを示す明確な証拠を示すべきといい、これには発酵開始時の微生物数、時間と温度条件、複数の生産バッチにおける微生物数の減少率の記録が含まれます。

また、賞味期限に関する表示は、安全性、栄養価、機能特性が時間とともにどのように変化するかを示す信頼性の高い研究によって、裏付けが必要です。

規制当局は、専門家による議論の結果が、精密発酵製品の認可申請を行う企業にとってより明確で予測可能な手続きを確立するのに役立つと述べました。FSAとFSSの審査官は、ワークショップで得られた教訓を、新規食品の申請に関する今後のガイドラインに反映させる予定です。

全体的な目標は、消費者保護基準を厳格に維持しつつ、精密発酵技術を開発する企業にとっての不確実性を低減すること。適切な証拠とは何か、そして安全性データがどう評価されるのかを明確にすることで、認可プロセスにおける追加質問の数を減らし、審査期間の短縮を目指しています。

参考記事:
FAQ: precision fermentation market authorisation in Great Britain | Food Standards Agency
Thematic report on emerging food innovations in the UK | Food Standards Agency
UK sets first safety guidance for precision fermentation foods as regulators move to support next generation of biotech ingredients | PPTI News

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