カナダのAuX Labs、精密発酵カゼインを使用したチーズの商品化に向けて約6.4億円の資金を獲得

カナダ・トロントを拠点とするスタートアップ企業AuX Labsが、精密発酵乳タンパク質の生産規模拡大と、アニマルフリーのチーズの提供に向けて、400万ドル(約6億3,500万円)の資金調達に成功しました。

安価なカゼインで代替チーズの性能改善へ


このラウンドは、NYA VenturesNàdarra Venturesが主導し、Verdex Capital、Builders VC、そして既存投資家のCongruent VenturesとBluestein Venturesが参加しました。

AuX Labsは新たな資金を活用して、組み換えカゼインタンパク質を用いた、溶けと伸びに優れたアニマルフリーのチーズを、一般の事業者や消費者が手頃な価格で提供できる、スケーラブルな技術の市場投入を加速させる計画です。

同社は精密発酵の技術により微生物にDNA配列を組み込むことで、発酵時に標的分子のカゼインを生成するようプログラムしています。

牛乳に含まれる主要な乳タンパク質であるカゼインは、乳製品の味と機能性において不可欠な成分。水と脂肪を乳化させ、ハードチーズが加熱によって溶けて伸びる特性を生み出しますが、植物由来の代替チーズにはこれが不足しているため、不満を抱く消費者が多くなっています。

AuX Labsは、既存のグローバルな発酵能力を活用することで、高い資本効率で精密発酵カゼインの生産を拡大し、従来のカゼインとの価格差を縮める狙い。

昨年11月には800人以上の米国人を対象に、自社のコンセプト製品と一般的な乳製品フリーチーズを比較する調査を実施したところ、溶けや伸び、調理感について「明らかに高い魅力」が示されました。

創業者でCEOのTed Jinは、「この分野の代替品のほとんどは、消費者に何らかの妥協を強いてきたが、当社は消費者が妥協する必要がないような独自の技術を開発した。プラットフォームの特長は、拡張性の高さだ」とコメント。

「少数のレストランに対して限定的に供給するのではなく、消費者が近所のピザ屋やカフェといったいつもの場所で、いつも同じ体験を提供できるようにしたい。この一貫性こそが永続的な信頼を築く鍵であり、今回の資金調達によって、それを実現するための基盤が整った」としています。

米国での製品化が可能な承認を取得


拡張性を考慮して設計された発酵プラットフォームを基盤に、希少性ではなく日常性を重視した市場参入戦略を採るAuX Labsは、その方向性に沿ったパートナー企業を選定して事業展開を進める計画です。

同社は2025年4月に、精密発酵カゼインのGRAS自己認証を実施。一般に安全と認められる物質として、米国市場での販売が可能になりました。

精密発酵チーズの本格的な発売に先立って顧客とのパイロット試験を実施しており、新たに得た資金で生産能力の増強、チームの拡大、そして「溶けと伸びが重要な高機能用途」に特化した外食・小売り向けパートナーシップの強化を図る予定です。

NYA Venturesの代表Alison Sunstrumは、「市場におけるポジショニングではなく、ユニットエコノミクス(単位あたりの経済性)、生産のしやすさ、そして性能に重点を置いていることが、事業の持続性につながっている」と評価。「AuX Labsは、世界最大級の食品カテゴリーで競争できる、拡張性の高いプラットフォームの基盤を構築している」と述べました。

精密発酵カゼインに対する投資家の関心は依然として高まっており、先月だけでも、オランダの企業Those Vegan Cowboysが、クラウドファンディングとベンチャーキャピタル投資を合わせて1,225万ユーロ(約22億8,000万円)の調達を完了。Standing Ovationはベル・グループやダノン、フランス政府から3,000万ユーロ(約55億8,000万円)を確保しました。

参考記事:
AuX Labs Secures $4M to Commercialize Precision Fermentation Cheese Platform
AuX Labs Nabs $4M to Commercialise Cheese Made from Animal-Free Milk Protein
AuX Labs raises US$4 million to commercialize precision fermentation cheese platform | PPTI News

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