オレオゲル技術を用いて低飽和脂肪のヴィーガンチーズを開発 —英・ヘリオット・ワット大学

英ヘリオット・ワット大学の科学者チームが、飽和脂肪酸の含有量を大幅に削減しつつ、食感と溶けやすさを向上させたヴィーガンチーズの実現を目指す研究成果を発表しました。代替チーズの開発における最も根深い2つの課題の解決につながると期待されています。
従来品の味の再現が難しい代替チーズ
Stephen Euston教授のチームは、ヴィーガンチーズをより健康的で持続可能なものにするため、食品イノベーション企業との10年近くにわたる共同研究を行ってきました。
新たに開発したチーズをラボからキッチンに移し、実際に人を使って味をテストするという新たなマイルストーンに到達するべく、英国研究・イノベーション機構(UKRI)傘下の工学・物理科学研究会議(EPSRC)から資金提供を受けたところです。
研究チームが焦点を当てているのは、乳製品の栄養価や機能性に匹敵する製品を作る上で課題となる、ヴィーガンチーズに含まれる脂肪分の見直し。
Eustonは、「初めてヴィーガンチーズを口にしたほとんどの人が、まず絶賛するには至らないだろう」といい、これは、乳製品と植物性チーズの根本的な組成の違いが重要な要因だと説明。
「おそらくは、タンパク質の不足が主な理由だ。従来のチーズは大部分がタンパク質でできているが、ヴィーガンチーズにはタンパク質が全く含まれていない。ヴィーガンチーズはデンプンが主原料で、少量の着色料や香料、場合によって少量の塩が加えられているだけだ」と述べています。
オレオゲル化で固形脂肪の特性を再現
脂肪は、このギャップを埋める上で中心的な役割を果たします。ほとんどのヴィーガンチーズ製品は、従来のチーズの構造と溶けやすさを再現するためにココナッツ油やパーム油を使用していますが、いずれも飽和脂肪酸を多く含み、健康面の懸念が高まっています。
「固形脂肪は、チーズに期待される、スライスしやすく溶けやすい食感を生み出すのに役立つ。しかしその結果、ヴィーガンチーズは飽和脂肪酸の含有量が高くなり、場合によっては25%にも達するため、必ずしも健康的な選択肢とはいえない」とEustonは指摘。
また、消費者の懸念は健康面だけにとどまらず、森林破壊やオランウータンなど野生生物への影響も検討するようになっており、ココナッツ油やパーム油に対する消費者の抵抗感はますます強まっています。
研究チームは、これらの油脂を、飽和脂肪酸含有量の少ないヒマワリ油や菜種油といった地元産の代替品に置き換えるという解決策を見出しました。フードマイレージの削減を目指して、英国で持続可能な方法で大規模に栽培できる作物を使用する試みです。
しかしながら、液体油を固形脂肪のように振る舞う形に変え、従来のチーズの食感を再現することが新たな課題に。この目的を達成するため、チームはオレオゲル化と呼ばれる技術を応用しました。
このプロセスでは、液体の植物油にゲル化を促進する分子を添加します。これらの分子が微細な構造を形成し、油分を閉じ込めて3次元のネットワークを作り出すことでできたゲルは、さながら固形脂肪のような挙動を示します。
溶けやすさの大幅な改善も達成
研究チームはまた、改良したチーズが飽和脂肪酸含有量を低減できただけでなく、意図せず機能性も向上させられたと報告しました。特に、ヴィーガンチーズの弱点としてしばしば指摘される「溶けやすさ」に著しい改善が見られたといいます。
現在の配合では飽和脂肪酸含有量を3%まで低減しており、通常の植物性チーズ製品(28%程度)と比べると大幅な削減に成功。このコンセプトはラボスケールの条件下で検証済みですが、実際の使用環境における性能評価にはさらなる取り組みが必要です。
上述したEPSRCからの新たな資金援助を受けて、研究チームは製造規模の拡大と、消費者を対象とした官能評価の実施に向けた準備を進めています。
Eustonによると、今後10カ月以内に試食イベントで提供を行う予定で、「市販のヴィーガンチーズと比べて味に優劣はないが、心臓の健康に良く、環境にも優しい製品になるだろう」とのこと。
本研究に関する最新の成果は、査読付き学術誌『Food Chemistry』に掲載されています。
参考記事:
Heriot-Watt researchers develop low-saturated-fat vegan cheese using oleogel technology | PPTI News
Scientists Just Made A Low-Fat Vegan Cheese With ‘Superior Meltability’


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