培養肉により食肉生産の社会的コストを半減させられる可能性 —ワーゲニンゲン大学など調査

オランダの官民連携プロジェクト「True Price – From Insight to Action」による最新の研究で、培養肉生産にかかる社会的コスト全体が、2030年までには従来の食肉生産に比べて2~3.5倍低くなる可能性があることが明らかになりました。

培養肉生産に移行するメリット


本プロジェクトは、ワーゲニンゲン大学経済研究所(Wageningen Economic Research)とCE Delftが共同で実施したもの。

オランダにおける従来の食肉生産(乳牛・豚・鶏)と、RESPECTfarmsの培養肉生産それぞれにかかる外部コスト(生産者が自ら負担せず社会に転嫁される費用)を算出し、比較を行っています。

CE Delftの研究員Pelle Sinkeによると、培養肉の利点は、動物に比べて飼料(原料)から食肉への変換効率が高く、窒素排出と土地利用を削減できること。

再生可能エネルギーを使用することで、生産時のCO₂排出量をさらに減らすことができます。総じて、従来の食肉から培養肉への移行は、大気や水の汚染といった外部コストを削減し、土地利用を改善することが期待できるとされました。

培養肉生産はまた、環境便益をもたらすだけでなく、屠殺の必要性をなくすことで食肉処理場の労働条件や動物福祉に対する懸念を最小限に抑えることも可能です。

植物性食品に加えて培養肉の普及が必要


2030年までにRESPECTfarmsが地元で生産した培養肉に切り替えることで、一方では化石資源と水不足に関連した特定の外部コストが増加することも予想されるものの、全体的なインパクトは圧倒的にプラス。

将来的に再生可能エネルギーを活用することで、化石資源エネルギーへの依存は緩和することが可能です。

また、脳卒中や糖尿病、大腸がん、肺がんなどの食事に関連する健康リスクへの影響に関しては、既存の研究結果が限られているため、ヒトの健康問題についての外部コスト試算はできなかったとのことです。

本研究では結論として、現在の食料システムは、環境問題や食料不安など複数の社会課題に大きく関わっていると指摘。

将来のタンパク質需要を満たしつつ、より持続可能な食料システムを実現するためには、現在流通している植物性食品の割合をさらに増やすことに加えて、培養肉の普及が必要となることを強調しています。

参考記事:
The societal costs of cultivated meat from the farm
Study Predicts Cultivated Meat Could Slash Social Costs of Animal Meat by Over Half

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