イタリアで培養肉を含む細胞農産品禁止の動き、食文化の保護が背景に

昨年、EU域内で流通し始めている栄養表示「Nutri-Score(ニュートリスコア)」に反対し、国内からの表示製品の排除を決定したイタリア。伝統的な地中海の食文化を守りたい意図があり、次は培養肉に対して規制の動きに向かっています。

安全性の保証が不十分と主張


3月28日、極右政党のジョルジャ・メローニ(Giorgia Meloni)政権は「合成食品 = 培養技術を用いた食品」の製造・販売を禁止する法案を提出しました。同法案が議会を通過すれば、違反した業者には事業停止や1万〜6万ユーロ(約140〜860万円)の罰金が科されます。

フランチェスコ・ロッロブリージダ(Francesco Lollobrigida)農業・食料・森林政策相は、培養技術を用いた食品のもたらす影響についての研究が不足していることに言及し、「実験室から生まれた食品は品質や人々の健康を保証できず、イタリアの伝統的な食文化を脅かすものだ」と述べました。

イタリア最大の農業者団体コルディレッティ(Coldiretti)も、「多国籍企業から国内産業を守るためには必要」と、法案への支持を表明しています。

前述のNutri-Scoreに関しても、イタリア、ギリシャ、キプロスは伝統的な地中海の食文化を不利にさせているとして別の評価システムを提案しているというので、このたびの培養肉への規制が地中海諸国に広がる恐れもあると考えられます。

EU諸国から取り残されるとの指摘も


これに対して、GFI EuropeAlice Ravenscroftは、「54%のイタリア人が培養肉を食べてみたいと答えていた中で、このような法案を通過させることで、消費者の選択の幅を狭めるべきではない。科学分野の発展も遅れ、EU諸国からイタリアだけが取り残される事になる」と指摘。

また、培養技術を用いた食品の安全性についても、「米国やシンガポールでは、十分な安全性を確認した上ですでに認可が進んでいる」と述べました。

シンガポールでは2020年12月、世界に先駆けて培養肉を正式に認可。米国ではUPSIDE FoodsGOOD Meatの2社が米国食品医薬品局(FDA)の安全性レビューをクリアし、生産設備の検査や登録など、適切なプロセスを経て市販可能な状態になっています。

今後EUでも認可が下りれば、EU域内では商品・サービスの自由な流通が認められているため、EU域内で生産された培養肉のイタリア国内での流通は避けられないでしょう。

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