最新のライフサイクルアセスメントが明かす、培養肉のメリットとは?
2023年版の事前ライフサイクルアセスメント(市場投入前の段階の技術に対してなされる評価)で、培養肉の効率性とメリットが改めて確認されました。
GAIA(Global Action in the Interest of Animals)、The Good Food Institute、CE Delftからの資金提供を受け実施された本アセスメントでは、15社以上の培養肉が調査され、2030年の培養肉生産の見通しが従来の動物肉と比較されました。その研究結果は、『The International Journal of Life Cycle Assessment』誌に掲載されています。
環境影響の大きい動物性食品
要旨には、「培養肉は、従来の肉に代わる環境にも動物にも優しい代替品として注目されている。技術が成熟するにつれてより多くのデータが蓄積され、不確実性が低下している」とあります。
研究者によると、本アセスメントでは、1kgの肉の製品開発から出荷に至る生産の全工程について調査を実施。調査の元となったデータは、培養肉メーカー5社のラボスケールの一次データ、製造工程の一次データ、計算モデルのデータ、および公表文献のデータです。
「動物性食品は、世界の平均的な食生活において、カロリーの約18%、タンパク質の37%を占めているが、環境への影響を見ると、非動物性食品と比較して不釣り合いに大きい(Poore and Nemecek, 2018)」と研究者は指摘しています。
また、動物性食品は人為的な温室効果ガス総排出量の16.5〜19.4%(植物性食品の2倍)の原因となっており、「フードシステム全体の排出量に占める割合が圧倒的に高い」とも。
従来の動物性食品は、飼料用の牧草地や農地を含めると、世界の農地面積の約83%を使用し、土壌水および海水の使用量の41%を占めています。
今回の調査結果では、培養肉は最も「効率的な」家畜と比べても、作物を肉に変える効率が3倍近く高く、農地の使用量を大幅に削減できていることが分かりました。家畜の糞尿も発生しないため、窒素の排出量も少ないことが分かっています。
再生可能エネルギーの活用が鍵に
また、培養肉の生産工程は「エネルギー集約型」であることから、再生可能エネルギーの必要性が指摘されています。
「再生可能エネルギーを利用した場合、培養肉のカーボンフットプリントは従来の牛肉や豚肉よりも低く、野心的なベンチマークである鶏肉と同等に」
「従来の肉ではCH4(メタン)とN2O(亜酸化窒素)の排出が多い一方、培養肉ではCO2が主であり、排出される温室効果ガスのプロファイルは異なる。培養肉では、バイオリアクターの温度維持と、バイオテクノロジーを用いた培地成分の生産に使われるエネルギーが、排出の主な要因となっている」
研究者は、培養肉メーカーは再生可能エネルギーの調達を含むエネルギー効率の最適化に取り組み、持続可能な原料確保に向けてサプライチェーン内での連携を進めるべきだと述べています。アセスメントはまた、各国政府に対し、新興の培養肉産業の再生可能エネルギー需要を考慮するよう要請。消費者に対しては、培養肉を単なる新しいメニューのオプションとしてではなく、環境影響の大きい従来の肉を置き換えるものとして認識するよう促しています。
培養肉は、ほぼすべての環境指標(とりわけ農地利用、大気汚染、窒素関連排出物)において、従来の食肉における野心的なベンチマークと比べても環境負荷を低くできる可能性があると、研究者はみています。
「培養肉の生産とその上流のサプライチェーンはエネルギー集約的であるが、再生可能エネルギーの利用を進めることで、確実に従来のあらゆる食肉に代わる持続可能な解決策となるだろう」
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