培養肉の販売開始まであと一歩、GOOD MeatとUPSIDE Foodsが米USDAからラベル認証を取得
今月、米国のGOOD Meat(Eat Justの培養肉部門)とUPSIDE Foodsが立て続けに、米国農務省(USDA)から培養チキンのラベル認証を取得。培養肉が米国家庭の食卓に、より一層近づくこととなりました。
生産・販売の規制クリアまであと一歩
UPSIDE Foodsは昨年11月、GOOD Meatも今年3月に、米国食品医薬品局(FDA)からの安全性認可を取得済み。GOOD Meatはすでにシンガポールで認可を受けており、世界で唯一、培養肉を販売している企業となっています。
今回のUSDA認証はこれらに続くもので、規制のクリアに向けて残るステップは、生産施設に対する米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)からの検査証明書(GOI)の取得のみとなります。
GOIを取得した場合、米国内で販売される製品にはUSDAの検査済みマークが付され、ラベル上の表記は「cell-cultivated chicken(細胞培養鶏肉)」となる予定。
培養肉の名称には、これまでにも「cell-based」、「lab-grown」、「cultured」と何種類かの表現が使われてきましたが、The Good Food Instituteの行った消費者調査の結果を受けて「cultivated」に落ち着き、製品ラベルにも正式に採用されました。
フードサービスから小売りへの移行を目指す
GOOD Meatは世界的に有名なシェフのJosé Andrésが経営するワシントンD.C.のレストランで、UPSIDE FoodsはDominique Crennが経営するサンフランシスコの「Bar Crenn」で、国内初となる培養肉のメニューを提供予定だとしています。
UPSIDE FoodsがGOIの取得を予定している米・カリフォルニア州の工場では、年間40万ポンド(約18万キロ)の培養肉を生産可能とのこと。まずはごく限られたレストランでの展開となる見込みですが、今後の生産能力の拡大スピードによっては、遠からず小売店での販売にも目処がつくかもしれません。
米国内外のほかの培養肉メーカーもFDAへの認可申請を行っているようで、今後さらに多くの認可が出るのではと見られています。
規制の動きで後れを取る欧州
欧州食品安全機関(EFSA)は先日、培養肉と精密発酵食品に関する最新のデータをレビューするイベントを開催。また、Deloitteは英国食品基準庁(FSA)に対する第三者報告書において、代替プロテインの市場投入を早めるよう、新規食品に対する規制の改革を提言しました。
こうした動きは、EUが培養肉規制では他地域に比べて後れを取っていることが背景にあります。
EUで培養肉製品を販売するためには、新規食品規則(Novel Foods Regulation)に基づき規制当局の認可を取得する必要があります。EUの規制当局が、少なくとも18カ月かけて、客観的なデータに基づき安全性と栄養価の評価を行い、認可されて初めて、EU27カ国すべてで販売が可能になります。
しかしながら、GFI Europeによると、現在までに欧州内で行われた培養肉の販売認可申請はないとのこと。
英国の調査会社GovGrantのレポートでは、EUの培養肉市場は2026年までに8億1,810万ドル(約1,088億円)超、英国では同4億2,960万ドル(約571億円)超に達すると予測されています。
しかし、この数字は中国(147億5,670万ドル=約1兆9,600億円)、北米(44億3,680万ドル=約5,900億円)、日本を含むアジア太平洋地域(15億7,650万ドル=約2,100億円)に大きく水をあけられており、一刻も早い規制の整備が待たれます。
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