オランダのThe Protein Breweryが、シンガポールで菌糸体タンパク質の認可を取得
バイオマス発酵を手掛けるオランダのThe Protein Breweryが、主力製品である菌糸体原料「Fermotein」について、シンガポール食品庁(SFA)からの認可を取得したと発表。同国における輸入、製造、販売が可能になりました。
欧州に先駆けて米国・シンガポールで展開へ
2030年までに国民の栄養需要の30%を国内で生産するという野心的な目標「30 by 30」を政府が掲げた2019年以来、シンガポールは持続可能な代替プロテイン業界のハブとして台頭してきました。
フィンランドのSolar Foodsもシンガポールをはじめの展開国に選び、2022年に認可を受けた空気由来のタンパク質原料「Solein」を使ったチョコレートを今年発売しています。
The Protein Breweryはシンガポールでの承認に加え、米国でもGRAS(Generally Recognized as Safe)自己認証を取得しており、食品原料としての使用が可能。カリフォルニアのBetterBrandは、Fermoteinを使用したグルテンフリーのベーグルを開発し、先日発売しました。
並行して、EUでの販売に向け欧州食品安全機関(EFSA)のリスク評価が進んでいるほか、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドでも認可取得を進めているとしています。
手頃な食事の栄養価を菌糸体で高める
分子科学者のWim de Laatによって2020年に設立されたThe Protein Breweryは、動物性タンパク質に代わるより持続可能な代替品として菌糸体原料の活用を推進する業界団体、「Fungi Protein Association」の創設メンバーでもあります。
可食性の真菌種をバイオマス発酵させて得られる「Fermotein」は、完全タンパク質が45%、不溶性食物繊維が35〜39%。代替肉から乳製品、焼き菓子に至る幅広い製品において、ニュートラルな風味と本格的な食感をもたらします。
豊富に含まれる繊維質が製品中の水分を保持するため、焼き菓子やプロテインバーの硬化を抑えて保存期間の長期化にも寄与するといいます。
同社が実施したライフサイクルアセスメント(LCA)によると、Fermoteinの生産に必要な土地は牛肉生産のわずか1%、水は5%であり、生産に伴うCO₂排出量も3%に低減。
持続可能性に加えて、トウモロコシ、ジャガイモ、キャッサバ、テンサイなどの非アレルギー性作物を原料に世界各地で製造することができるのも魅力です。また、ウェットな状態から冷凍して供給されることの多い他社のマイコプロテイン製品と比較して、Fermoteinは乾燥粉末であることもサプライチェーン上のメリットとなっています。
2020年に2,200万ユーロ(約36億円)を調達した同社は、その翌年にオランダ国内で日産100kgのパイロットプラントを稼働させ、さらなる規模拡大計画を発表していました。
CEOを務めるSue Garfittは、「食品の選択において利便性を重視する傾向が、調理済み食品やテイクアウト食品への依存につながっている。Fermoteinをこうした料理に取り入れることで、味や食感を損なうことなく栄養価を高めたい」と語っています。
参考記事:
The Protein Brewery Receives Novel Food Regulatory Approval for Mycelium Protein in Singapore
The Protein Brewery Earns US & Singapore Regulatory Approval for Fermotein Ingredient
CHANGING THE WAY OF PRODUCING NUTRITION
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