米Omeat、培養肉生産に血漿を用いる斬新なアプローチを発表

米・ロサンゼルスのスタートアップ企業Omeatが、生きた牛から人道的な方法により採取した成長因子その他の成分を細胞培養に用いることで、培養肉生産のスケールアップを可能にする斬新なアプローチを発表しました。

満を持してステルス戦略から脱却


Omeatは、組織工学が専門でハーバード大学医学部などでも教授を務めたAli Khademhosseini博士により、2020年に設立。これまでにTyson Ventures、GV(旧称:Google Ventures)などから累計4,000万ドル(約53億2,000万円)の資金を調達しています。

Khademhosseiniは、「将来の技術革新に頼るわけではなく、規模を拡大すれば今すぐにでも従来の肉と同等の価格を実現できる」とし、現在建設を進めるパイロットプラントに導入した1万リットルのバイオリアクターで、近く生産を計画中だといいます。

自社農場で牛を放牧


Omeatでは、細胞を不死化して無限に増殖させる一般的な細胞培養のアプローチとは異なり、筋肉細胞など特定の種類の細胞に分化する、成体幹細胞や前駆細胞を使用。

また、屠殺した牛の胎児から採取した栄養豊富なウシ胎児血清(FBS)を培地として用いる代わりに、自社農場で飼育している生きた牛の血漿から、細胞の自然な成長を促す成長因子などの主要成分を抽出します。このプロセスは、ヒトの血漿成分献血と同様、痛みを伴いません。

具体的には、牛をプラズマフェレシスを行う装置につなぎ、血液を採取。血漿成分のみを遠心分離し、残った血液は再度牛の体内に戻します。 血漿はさらなる処理工程を経て、成長因子などの目的の成分が抽出されます。処理には針を刺すだけで済み、処理後の牛はまた放牧に戻します。血液と違って血漿はすぐに再生するため、負担もありません。

現在飼育されている家畜の数分の一で、地球全体を養う


この方法は、FBSを使うよりも人道的でスケールアップも容易であり、遺伝子組み替えした微生物の精密発酵により作られたタンパク質を外部から購入するよりもはるかに安上がりだといいます。

牛1頭から得られる肉が300キロとして、3年後に屠殺すると年間100キロの計算。CEOのKhademhosseiniによると、Omeatのプロセスでは、1頭の牛から年間2,000キロの肉を生産する原料を供給できる上、屠殺の必要がないため牛は15~20年生きられるとのこと。「現在飼育されている家畜のわずか数分の一で、地球全体を養うことが可能だ」と語っています。

ロサンゼルス近郊のパイロットプラントは、すでに米国食品医薬品局(FDA)への登録申請を済ませており、今年中の稼動を予定。販売認可についても、FDA・米国農務省(USDA)との協議を進めています。

初めの製品としては牛ひき肉を検討していますが、牛の血漿はほかの動物細胞の成長培地としても機能し、同じ方法で鶏肉・豚肉・羊肉の培養についても試験済みです。

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