細胞ベースのコラーゲンを製造する米Jellatech、シードラウンドで5億円超を調達
米国のバイオテクノロジー企業Jellatechが、細胞ベースのコラーゲンその他のタンパク質生産をスケールアップするため、応募超過となったシードラウンドで350万ドル(約5億1,300万円)の資金調達に成功したと発表しました。
細胞培養によりコラーゲン代替品を製造
同社はこれまで、バイオリアクターで培養した牛や豚の細胞にコラーゲンを生成させることで、アニマルフリーのコラーゲンを開発。今年3月には、組織工学や再生医療において使用される、完全に機能する三重らせん構造を持ったヒト全長コラーゲンの開発にも成功していました。
今回の資金調達ラウンドでは、デンマークのbyFoundersがリードインベスターとなり、Milano Investment Partners、Joyful VC、Siddhi Capital、Blusteinなどが出資。
Jellatechはこの資金を、生産規模の拡大や他企業とのパートナーシップ確立に加え、ヘルスケア・パーソナルケア製品、生物医学研究、食品・飲料に使用されるアニマルフリータンパク質の商用化に充てるとしています。
コラーゲンは、動物に最も多く含まれるタンパク質。牛、豚、魚の皮や骨などから抽出され、組織工学や再生医療の分野で幅広く使われる原料となっていますが、コラーゲンのサプライチェーンは動物倫理の問題にとどまらず、世界の一部の地域で森林伐採や人権侵害に関係していることが分かっています。
今年行われた調査では、コラーゲン生産のために飼育されている何万頭もの牛が、アマゾンの森林伐採に関連した農場で飼育されていることが明らかになりました。また、英国の非営利報道機関The Bureau of Investigative Journalismのレポートによると、アマゾンに住む先住民コミュニティからの違法な土地収奪が増加しているとのこと。
コラーゲンは食肉生産の副産物として得られるため、今後培養肉の推進と同時に、コラーゲンも代替品に置き換えていくことが必要です。
検証が進むコラーゲンの健康効果
世界のコラーゲン市場は2022年に91億2,000万ドル(約1兆3,400億円)となり、2030年まで毎年10.2%の成長が見込まれていますが*1、こうした需要にもかかわらず、コラーゲンの効能については大きな議論があります。
一部の研究結果が、コラーゲンは髪、肌、爪、関節を若返らせることができると主張する一方で、ハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)では、研究の多くは業界の関係者や利害関係を有する科学者からの資金提供を受けているとして、研究結果にかかるバイアスについて消費者に注意を促しています*2。
しかしながら、コラーゲンそのものを摂取するのではなく、コラーゲンを作り出す食品を摂取することのメリットを中立的な立場から指摘した研究も。ビタミンC、亜鉛、銅、ケイ素、アミノ酸のリジンとプロリンを豊富に含む食品は、体内でのコラーゲン生成による健康効果が見込めるとされています。
細胞農業でコラーゲン代替品を作るその他の企業の動きとして、米Geltorは、精密発酵によりコラーゲンペプチドを開発しました。イスラエルの培養肉企業Aleph Farmsは今年3月、細胞ベースのコラーゲンを製品ポートフォリオに加え、来年度の市販化を計画しています。
*1 https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/collagen-market
*2 https://www.hsph.harvard.edu/nutritionsource/collagen/
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