植物ベースの食事により慢性腎臓病(CKD)患者の死亡リスクが低下 —American Journal of Kidney Diseases

米国腎臓財団(NKF)が刊行する査読付き医学誌『American Journal of Kidney Diseases』の2023年12月号に、慢性腎臓病(以下、CKD)の管理において食事が果たす役割に関する、新たな研究結果が掲載されました。

ジョンズ・ホプキンズ大学ブルームバーグ公衆衛生大学院疫学科のCasey M. Rebholz博士が主導した本研究によると、健康的な植物ベースの食生活を送ることが、CKD患者の全死亡リスク* の低下と関連していることが明らかになりました。

その逆に、植物ベースであっても不健康な食事をしている人では、CKDの進行と全死亡リスクが上昇するといいます。

* CKDに限らず、あらゆる原因により死亡するリスク

制限ではなく食事の「質」が重要


CKDは、世界中で数百万人が罹患しているとされ、死亡率を押し上げる大きな要因となっている疾患。本研究は、2003〜08年にかけて実施された慢性腎不全コホート(CRIC)研究のCKD患者2,539人を対象としたものです。

従来、CKD患者に対する栄養指導は、特にタンパク質の摂取制限や、リンとカリウム値のコントロールといった「制限」の面に焦点が当てられてきました。

本研究では、植物ベースの食事全般に加え、その中でも健康的なもの不健康なものを区別することで、食事の「」の重要性を強調。健康的な植物性食品には果物や野菜、不健康な植物性食品には砂糖入り飲料などが含まれます。

結果として、植物ベースの食事全般を採用していた参加者では全死亡リスクが26%、健康的な植物ベースの食事では21%低かったとのこと。

そして不健康指数のスコアが10ポイント高くなるごとに、CKDの進行リスクは14%、全死亡リスクは11%高くなりました。

患者の幸福や生存率向上につながる可能性


今回の研究成果は、植物ベースの食事の採用が、CKD患者にとって実行可能かつ有益な選択肢となり得ることを示唆しています。

全米腎臓財団(NKF)のCEOで、自身も腎臓移植を受けた経験のあるKevin Longinoは、「一見常識のようにも聞こえるが、この研究結果にはそれ以上の意味合いがある」とコメント。

「CKD患者に行われている栄養指導の現状を覆すものであると同時に、医療従事者やCKD患者に実用的なインサイトを提供し、患者の幸福、ひいては生存率を高め得るものだ」と語っています。

前述のとおり、CKD患者の治療において従来の「制限」を主とした手法から、食事の「質」に重点を置いたより包括的なアプローチへの転換が促されるかもしれません。

自己申告された食事データの測定に誤差が生じる可能性など限界もあるものの、CKDの進行と管理に対する食事の影響を理解する上で、本研究は重要な一歩になるとみられます。

参考記事:New study finds significant impact of plant-based diets on chronic kidney disease patients

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